前途多難な補佐官業務

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 「補佐官は新任だから知らぬだろうが、実は捕虜変換の対価については、ヴァルシャ帝国側から既に条件が出ておる。」  宰相のクラーゼン侯爵が、一同を見回し重々しく口を開く。  え?そうなの?つか、みんなそれ知ってんの?  「あの、どんな条件ですか?」  「捕虜1名につき炎石銃(フリントロック)2丁だ。つまり捕虜2,000名だと4,000丁になる。」  「それっていくらくらいするんですか?」  「炎の精霊を封じた高価な魔石を使いますからなぁ。まぁ、1丁あたり金貨100クラウン。といったところですな。」  あたしの問いにワルトハイム伯爵が丁寧に答えてくれた。  なるほどー。確か竜人は腕力も魔力もあって空も飛べる一方で、人類より手先が不器用と聞いたことがある。  彼らが銃を作る場合は人類の奴隷にやらせるしかなくて、奴隷に職人魂とかないから質の低い銃しかないんだろう。  「じゃあ4,000丁だと金貨40万クラウンですよね。さっさと銃作って渡して捕虜さん返して貰って講和しましょうよ?」  「40万クラウンだぞっ!この財政難の折に何を言うかっ!?」  しばらく黙っていたフェルマー男爵が眉を逆立てて再び立ち上がった。  なーるほど。  みんなが講和にイマイチ乗り気じゃない理由をあたしはようやく理解した。  いくら捕虜と引き換えとはいえ、高価な炎石銃を敵に大量にくれてやるのが納得いかないのだ。しかも捕虜ってほとんど平民だろうし。  そういうことなら……
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