前途多難な補佐官業務

8/13
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 「私が宰相閣下よりいただきました、陸軍省からの概算要求資料がここにあります。」  あたしは1枚の資料を取り出した。  そこには、陸軍が新造予定の航空戦艦やら飛行甲冑やらのお値段が書いてあったのだ。  「この資料によりますと、竜人を凌駕するには航空戦力の増強は必須で、少なくとも航空戦艦をあと2隻、加えて新型の飛行甲冑(ベーオウルフ)200体が必要とあります。」  「それらに必要な予算は?」  ワルトハイム伯爵がタイミングよく合いの手を入れてくれる。  「はい、航空戦艦は1隻あたり金貨300万クラウン、飛行甲冑(ベーオウルフ)は1体あたり15,000クラウンです。陸軍の要求を通して戦争を遂行するなら、かかる予算はおよそ金貨900万クラウンです。これに比べたら40万クラウンなんて安いものだと思いません?」  会議室に再び沈黙が訪れる。  凄い額だなぁ……自分で発表しながら、あたし自身そう思ってしまう。  900万クラウンといえば、人口5万人規模の都市住民全員の年収を全て合わせたくらいの金額に相当する。  帝国の国庫はもう既にカラに近く、この上900万クラウンを調達するなら大規模な増税しかない。  「よろしい。では、補佐官提案のうち『ヴァルシャ帝国との講和』については、宰相案として御前会議に上奏することとする。」  宰相閣下の鶴の一声で、少なくとも講和が議題に上がることは決定した。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!