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5. スタジオにて
手紙を読み終えた僕の顔を海苔田さんは見つめた。
「もしかしてこの体験は、山田くんの……」
僕は小さく頷いた。
「あの体験が何だったのか、今でも分かりません。あの焼きそばが過去と未来を媒介していたのかもそれません」
「良い話ね。先祖から受け継がれた焼きそばが過去と未来、そして人の心と命を繋いでいくんだから」
「何であれ僕が今生きてこの仕事をしていられるのは、一さんと女将さん、一さんのお母さんと、あの焼きそばのおかげだと思っています」
「そんなに美味しい焼きそばがあるなら、私も食べてみたいわ」
「僕も時々あの焼きそばが無性に食べたくなります。他の店で食べても、やっぱりあの焼きそばのようではないんですよ」
「お孫さんが店を開いてるなら、またいつか食べる機会があるかもしれないわね」
「そうですね。それにしても、もう一つ不思議なことがあるんです」
僕はまた手紙に目を落とした。
「この手紙、僕が大学を卒業する直前に別のラジオ番組に投稿して読まれなかったやつなんですよ。どうして今ここにあるんでしょうね?」
「怖っ」
了
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