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紺谷信二郎は満面の笑みを浮かべた。
「いやー、素晴らしい!」
紺谷は顎髭を撫でながら 青 に近付き、その肩に擦り寄りモニター画面を覗き込んだ。
「ーーーー」
吐く息が臭く、青 はその距離の近さに顔を顰めた。
「結城紅はどうでしたか」
「良いモデルでした」
青 の表情は厳しく、氷のように冷たい目をしていた。
「そうですか!」
「ええ」
「どうでしょう、これを機会に結城紅の専属カメラマンになりませんか」
「お言葉ですが結城紅の専属カメラマンは蒼井拓真ですよね」
「確かに、蒼井さんの作品は素晴らしい」
青 はSDカードをカメラ本体から素早く抜き取り、駆け寄ったスタッフに手渡した。
「私は必要ないと思いますが」
青 は床にしゃがみ込んでカメラバッグのファスナーを開けた。
「object 紺谷組はフォトグラファーAOを求めています」
「蒼井拓真がフォトグラファーAOです」
周囲では照明機材の撤去やコードの巻き取り、水槽の水を抜く作業が行われていた。萎れかけた花や草木は手折られゴミ袋に詰め込まれた。
「佐原 青 さん、あなたがフォトグラファーAOの代作者である事は明白です。先日、週刊ヴィヴィの九重がお伝えした通り来週の誌面にその記事を掲載する事が決定しました」
「蒼井拓真はどうなさるおつもりですか」
青 は顔を挙げる事なく手を動かし、それを見下ろした紺谷信二郎は困り顔で首を傾げて見せた。
「蒼井拓真さんにはスクープ記事の話題提供者としてご活躍頂きましたから週刊ヴィヴィの芸能カメラマンとして雇って差し上げても構いませんよ」
「拓真がスクープ記事の話題提供者?」
「ネタですよ、ネタ」
次の瞬間、 青 は紺谷信二郎の両腕を片手で捻り上げると右手を喉仏に突き刺した。
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