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「スクープ記事が欲しいんでしょう!」
「や、止めてくれ」
「良かったわね。私がスクープ記事になってあげるわ」
右手にはステンレス鋼の刃先6cmのフォールディングナイフが握られ紺谷信二郎の首筋に当てられていた。現場に緊張が走る。拓真は手にしていた携帯電話を手放し暗幕から身を乗り出したが呆気なく井浦に羽交締めにされた。
「お嬢ちゃんは殺人事件の犯人として逮捕される」
「ーーーー逮捕」
「殺人に時効はないからな」
「時効」
「そうだ」
水槽から水を抜いていたスタッフは震える手でビニールホースを床に置いた。それはまるで息をする蛇の如く跳ね回り、紺谷の腕を捻り上げる 青 に降り注いだ。
「紺谷さん、あなたが欲しいフォトグラファーAOは殺人犯なの」
「ーーーなんの、事」
「私は10年前に人を殺したわ」
降り注ぐ雨、赤い血液、拓真は10年前のあの夜に引き戻された。
「ひっ」
「紺谷さん、スクープどころか最上級のスキャンダルよ良かったわね」
「は、離してくれ」
「蒼井拓真を傷つける人は許さない」
「悪かった!悪かった!だから、離してくれ!」
妖しい微笑みの 青 は周囲を見回しながらその手を振り上げた。
「あなたも仲間に入れてあげるわ」
「ひぃ!」
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