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上弦の月の光に誘われた夢をみた。
上弦の月の光が差す道を、あなたと手を繋いで歩いた。水辺に映る月を指先で触れた時、水面が輝きを見せた。瞳を閉じて、お互いの呼吸が一つに感じられた時に、そっと唇を合わせた。
いつかの夜のように、奪うようなものは必要はない。優しい触れ合いに変わった時、微笑みながら唇を離した。回転木馬からの光が広がった時に、醒めない夢へと誘われた。微笑み合って、その光から背を向けた。
とめどない魂を破壊しないで。
迷子になって怖かった貴方の心。
戦う日々と穏やかな笑顔。激しさと穏やかさの二つの心があろうとも、あなたとなら歩いて行ける。そして、あなたとの日々を再開させた。いつまでもずっと。
そう思って結婚したのが三年前。素敵な日常を想像していたのに、待っていたのは現実だった。結婚したら相手が変わる、よく聞くフレーズだ。今日も俺たちは喧嘩をした。仲直りはこれからする予定だ。たぶん。
「結婚してから変わったよね。うっ……うっ、ひっく……」
「すまない。言い過ぎた。許してくれ」
「ふん……」
「どうしたら機嫌を直してくれる?」
「黒崎さん次第だよ」
「愛している」
「俺もだよ」
いつものように、喧嘩をして仲直りする。
今回もそうだろう。おそらく。
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