音音恋 仁

16/16
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
一ヶ月ほど会えてなかった奈生。 ちゃんと勉強道具が入ってる事がわかるトートバッグを肩から下げて車に乗ってきた。 「俺の家じゃ遠いから カフェで勉強しよう。」 この前の言葉 まだ気にしてるだろうから 人目のあるところの方が安心するだろうと ワーキング歓迎のカフェへ行く。 「ドリンク買ってくるけど 何がいい?」 「んじゃ カフェオレのトールがいい。 お砂糖要らないから。」 トレイを片手に戻ると 奈生は真面目に勉強してた。 コトンと置いたトレイに目を上げ ありがとう、と笑う。 その笑顔…やっぱり好きだ。 「わからないところ 無さそうだけど?」 「これから出て来るから… 大丈夫だよ?」 何が大丈夫なのか… わからないとこあるのは大丈夫じゃないだろうに… そっか、と奈生の頭を撫でる。 少し俯きそれでも嬉しそうに笑うから 抱きしめたくなる… カツカツッと鳴るシャーペンの音が途切れる。 ん?と見ると… 「仁 お腹空いた…」 時間を確認するともう夕方五時過ぎ。 集中力すごいな… 多分 陸上での賜物かな… 「送ろう? それとも 食べてく?」 「仁と一緒に食べたい。 でも 仁 忙しくない?」 「忙しいけど 今日は奈生優先。 ごめんな 気使わせて。 これからは少し我慢するから。 何食べる?」 「あの海のカフェ行きたい。 海の席 空いてたらいいな。」 海好きなんだよな… 食べたら 海岸降りてみようか… 奈生の希望の席は 空いてなかった。 仕方ないよね、と それでも窓際の席へ座る。二人掛けで狭いけど 向い合せで手を伸ばせば奈生に触れる。シェアセットがいいと ピッツァ サラダ パスタ  デザートとドリンク。 取分ける奈生。 「私 これくらいで。 あと仁食べてね。」 ほぼパスタもピッツァも三分の二は俺。サラダは半分ずつ。 食べられるだけ今はストレス無いってことか… 「来週文化祭なんだよ。」 「今年は何やるんだ?」 「クラスのは 男子がたこ焼きの屋台やるんだって。 女子は仕込みだけ。 でね?」 また 何かあるのか…? 「写真部の…」 「また写真売るのか?」 奈生が言い終わる前に口出しした俺… 「最後まで聞いて。 あのね 友達が写真部で 去年から一年私をモデルにしてたの。 隠し撮りとかもあったんだけど 一応 いつ撮るかわかんない感じで撮るから、って言われてたの。 それが写真部で展示されるの。」 「男か?」 「ギャハハ!」 何がおかしい?ムスッとした俺を見て笑ってるけど。 「ノンコだよ。一緒にライブに行った子。覚えてない?」 「あぁ男子と一緒に来た子な?」 「うん それでね。 すごく自然に撮ってくれてて 高校生の写真コンテストで銀賞取ったの。 だから…」 「みたいな。何で言わなかった?」 「仁 忙しそうだし…悪いかなって思ったんだけど… パネル見せてもらったら 仁に見てもらいたくて…」 来週…試験だよな… 終わってからで間に合うか… 「試験なんだよな… 文化祭 何時まで行けば間に合う?」 「えっ? だったらいいよ。ごめんなさい。 仁 忙しいのわかってるのに… 試験だったら仕方ないもん。」 「何時まで?」 「十四時…までやってる。」 「ギリだな…下手すると間に合わないな…」 仕方ないよ、と笑う。 行きたい…けど はっきりしない約束はしたくない。 「そのパネルって モデルに貰えない? 俺 欲しいんだけど? 全部買い取ってもいいけど?」 冗談と思ったのか  キャハハと笑ってるけど 俺は本気なんだけど? 「奈生 マジ聞いてみて。」 珈琲とデザートもしっかり食べて店を出た。車に戻ると思っていた奈生は駐車場へ足を向ける。 その肩を掴み引き止め 手を繋いで砂浜へ降りていく。 日は沈んで暗くなり カフェの明かりが砂浜への階段を照らす。 「足元 歩きにくいから気をつけろよ。」 うん、と言いながら 階段があと一段というところでコケるって… 急いで身体を抱え 体制を整える。 「ありがとう。」 「波打ち際 行くなよ。 もう冷たいから…」 そう言ったあと すぐ駆け出し 波打ち際へ行くって… イヤイヤ期の子供かよ… 濡れた砂浜前に ぺたんこシューズが揃えてある。 濡れた足どうすんだよ… パシャパシャと歩いてる… 「冷たくないのか?」 「冷たいよ。」 そう言いながらもクルクルとあちこち歩く。 仕方ねえな… 砂浜に腰を下ろし 奈生を目で追う。 しばらく波と遊んでいたけど くるっと振り向き 俺の隣に脚を伸ばして座る。 「電話が来た時…」 ん? 「別れるって言われるかと思ってた。」 ん?何で…? 「なんとな〜く…ね。 そう思っちゃったから… 直感?」 「勝手に決めつけんな。」 「だって…」 珍しいな こんなこと言うなんて。 そういえば…と 首からチェーンを外す。 トップにスカルの燻銀細工。 奈生には似合わないデザインだけど 男からのプレゼントだとすぐわかるだろう。 奈生を正面から包むようにチェーンを首にかけてやる。 「俺の身代わり。 会えないけど 俺を忘れないようにな。 虫除けも兼ねるから 絶対外すなよ。」 チェーンを右手で掴み うん、と頷く。 リングやブレスレットじゃ学校にしていけないからな。 これなら していてもわからないだろ。 文化祭は やっぱり行けなかったけど 展示のパネルの写真をスマホで送ってきた。 女子から目線なのか ニコニコ顔ではなく 真剣な表情とか 気の抜けた表情をしていたり 俺の好きな キッと睨む顔があったり… 全部制服姿で 俺が見ることが出来ない普段の奈生。 “ノンコちゃんに マジニ買い取りしたいって伝えておいて。” 無理だよ〜と返ってきたライン… 駄目かぁ…
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!