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俺は小さくつぶやいた。
そして弾かれるように立ち上がると、体を密着させながらエデンの両手首をつかみ、両手に最大限の握力をかけた。
特殊鋼でできた関節を握りつぶすことは容易ではないが、少しでも機能不全を引き起こせればそれで十分だった。
「騙すなんて……ひどい人ですね」
エデンが無表情に俺を見つめながらつぶやくと、握力を奪われた彼女の両手からは2丁の拳銃が滑るように落ちていった。
俺は右手を離すと、すかさずエデンの腹部に貫手を放つ。それは服と有機質の皮膚を貫き、人工筋肉を裂きながら彼女の体内に深々と突き刺さった。
傷口からは鮮血が逃げるように噴出し、地面を朱色に染めていく。しかしそれは有機部品の維持と人間の目を欺くために流れる血液であり、エデン本体に損傷を与える類のものではなかった。
俺はそのまま力任せに腕を押し込み、やがて手の先は肋骨の内側にまで達した。
エデンは不思議と抵抗する意思を見せず、ただ一言、「またやられてしまいました……」とささやいた。
ジェネレーターに繋がる電力線の束を指先で確認すると、俺は一気にそれを引きちぎった。
エデンはもたれかかりながら俺の体に体重を預けると、抱きつくように背中へと両腕を回した。
俺は最後の悪足掻きに警戒したが、その後、エデンが動くことは無かった。
体内から腕を引き抜きながら密着するエデンを押し退けると、支えを失った彼女は血溜まりの中へと自重に任せて倒れ込んでいった。
抜き取った右手は血液でべっとりと濡れており、皮膚が所々擦り切れ、内部の骨格が露出していた。
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