彼岸からのメッセージ

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(聞きたいこと?)  不思議に思いながら、友美は悠貴からのLIMEを確認する。  しかし、メッセージは〈聞きたいことがあるんだけど…〉としか書かれていない。文章の続きが送られてくるのを待つが、5分ほど待っても何も送られてこなかった。 〈聞きたいことって?〉  友美がメッセージを送るも、既読はつかず未読表示のままだ。彼は続きを送る気がないのかもしれない、と友美は判断してトークを閉じた。  あるいは、送る相手を間違えたのかもしれない。 〈ごめん、寝落ちしちゃってた。酒弱い俺が飲めるソフトドリンクはちゃんと買ってくれた?〉  悠貴からLIMEが送られてきたのは、30分ほど経ってからのことだった。  聞きたいことがあるという前置きがあったからには、もっと重要な話かと思っていた友美は拍子抜けだった。 〈ちゃんとあるよ。ジュースもお茶もある〉  返信したが、またしても既読がつかない。寝落ちしているのだろうと思いながら、友美はつけっぱなしになっているテレビのリモコンに手を伸ばす。  電源ボタンに指が触れたところで、テレビの映像に見覚えるのある街並みが映った。 〈速報 公園横の歩道に乗用車が突っ込む〉  テレビの下側に字幕が表示され、若い女性リポーターが喋り始める。 『私は今、事故があった××公園に来ています。桜が見ごろを迎えたこの公園には、多くのお花見客が訪れており…――』  その公園は、これからゼミの同期たちとお花見をする予定の公園だった。友美の背筋を冷たい汗が伝う。心臓がバクバクと大きく鳴り出し、口から飛び出しそうだ。 〈事故あったってテレビでやってるけど、大丈夫?〉  現場にいるはずの悠貴にLIMEを送る。既読にならない。先ほど送ったメッセージも未読のままだ。  寝落ちしているのだろうか。だが、テレビで見る限りでは公園の周辺にはパトカーが止まっていて見物人も多くいる。  騒がしいだろうに、彼はそれでも寝ているのだろうか。  嫌な予感がし、悠貴に電話をかける。だが、何度かけても〈応答なし〉の表示と〈もう一度かけ直す〉〈キャンセル〉の選択肢が表示されるばかりだった。 〈悠貴と連絡取れたやついる?〉  グループLIMEでも、事故のことが話題になっており、皆が悠貴の身を案じているようだった。 〈メッセージが既読にならないんだけど〉 〈電話も繋がらない〉 〈でも、事故があったの8時13分ごろだって〉  ゼミ長からの情報に、友美は慌てて悠貴とのやり取りを見返す。悠貴から卒論についてのメッセージが送られてきたのは8時14分だ。 〈その時間なら私のとこに悠貴から連絡あったよ〉  友美がメッセージを送ると、安堵するメンバーがいる一方で、未だに連絡が取れないことを不安がるメンバーもいた。  グループLIMEの既読数も途中からずっと9のままだ。 (無事なら早く連絡してよ)  友美は悠貴とのトーク画面を祈るような気持ちで、食い入るように既読表示にならないかを見つめるのだった。
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