Queen Of The Stone Age

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謁見の間は、彼女一人だった。 もう他の誰もいない。その人たちは、死んだか、逃げたか、裏切ったか。 だがもう、そんなことはどうでもよかった。 手元に残ったものがすべて、これから生きるにしろ、死ぬにしろどちらにせよ持っていけるものはそれだけだ。 女王はもう、明鏡止水の境地にいる。 だから、もう何もいらない。 たくさんのものを与えて、与えられて、そしてなくして。そしてここにいる。 薄白く光る、強固な鎧に包まれて。 背中には無数の悪霊を背負って。 おびただしい血に染まった両手を携えて。 そして、悲しみを乗り越えたダイヤモンドのようなハートを胸に収めて。 王座に座る彼女は、大股に猫背で入り口を睨み続けていた。 本来ならば許されざる、自由への渇望を胸に。 本来ならな忌むべきはずの、解放への期待を拳に。 本来ならば叛逆を許されない相手への確かな憎悪を全身に。 そして……白いヘルメットをつけた男が、ようやく訪れた。 危険な武器を片手に。メタルの格子の隙間から、野獣のような目を輝かせて。 ならずものは女王に向かって言ってのけた。 「……戻ってきたぞ」 その表情は、何も語らない……男も、女王も。 今この二人は、お互いの世界に互いしかいない。 まるで世界は小さな虫かごで、その中に二匹のハエが閉じ込められている。 「思ったより、遅かったね」 「……」 「世界をここまで壊して、どんな気分?」 「あるべき姿に戻しているだけだ」 その目は、光を帯びていない。確かな輝きはあるのに。 「そして最後に、戻るべき創造主の御許に戻ってきた。それだけだ」 「世界と心中するのってさ、思ったより気軽なものなんだね」 女王はもはや、無用の長物となった緑色の装置を放り投げた。 男は、その装置を踏み潰して壊した。 「こんなもののために、みんな死んじゃったんだ」 「すべて、初めから決まっていたことだ」 女王はため息をついて、のっそりと立ち上がり踏み潰された残骸を蹴り飛ばした。 誰も彼もが、このガラクタに振り回されて死んだ。 「どうせ崩壊するからと、皆目先の幸福に溺れたうえでわかりきった結末を迎えた。あとは打つべき終止符を打つだけだ。薄っぺらい希望に踊らされ続けて、現実逃避を続ける愚者ばかりの世界に何の未練がある?」 「……あたしもあんたも、そうなんだよ」 「ん……?」 「この世界に、生まれてしまった。だから自分の意思は自分で決める」 「……」 男は確かに無表情だ。そして殺意も備えている。 しかし、それでも。 相手への敬意はあるようだ。 「見せてもらおうか、お前が見てきたものを……」 二人は同時に駆け出した。 闘いが始まろうとしている。 なぜ、こんなことになってしまったのか。 そう考える者は、そう多くはない……
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