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エピローグ
その日は、友人であるティグラートとレオノーラ、そしてロンバートとティアラーナ。4人でいた時の事だった。
ほんの少し、ロンバートがティグラートの方に顔を向け話していた隙に、ティアラーナは人攫いの男に腕を引かれ路地裏に引き込まれた。
ロンバートはすぐに気付き、男とティアラーナに追い付いた。
ティアラーナは直ぐにロンバートの腕に引き戻された。
「ティアラーナ、目を閉じて。」
あっという間に、人攫いの男は切り刻まれた。
こういった事件があると、ティアラーナは酷く落ち込む。
今回はレオノーラがティアラーナと話をすると言うので、女性2人を残して、ロンバートとティグラートは別室に入った。
「…ちょっと冷静さに欠けてたのは分かるが、切り刻んだのは衝撃的だったんじゃないか?」
「…分かってる」
ティアラーナは、自分に自信が無い。
だからロンバートに迷惑が掛かると落ち込む。
自分のせいで、ロンバートが全てを捨て市井に下ったと思い込んでいるからだ。
ロンバート自体は、実は今の生活が気に入っていた。
思う存分独占欲を発揮し、ティアラーナを独占している事。
ティアラーナを隠匿する事で、ロンバートしかいない環境だ。
人に振り回されることも少なく、2人の為だけに時間を割く事が出来る。
皇族なんて良い事は無いな。そう思う。
その考えだけは、どれだけティアラーナに言っても理解してくれなかった。
「…泣いてる…、もう行くよ」
ティアラーナから離れられないロンバートは、我慢すること無く、ティアラーナの元へ向かった。
白銀の華奢な美少女が目の前でハラハラと涙を流す様を見て、なんて美しいんだろうとレオノーラは思った。
しかしティアラーナは言う。
「…何も役に立てない私が、あの人の全てを捨てさせた…。苦しい。なのに、嬉しくて堪らない。護られて、愛される資格なんて無いのに…」
「…ロンさんが納得してるなら、それは違うんじゃないかな?」
思わず頭を撫でずには居られなかった。
「…スピアーノの国王であったなら…」
その時、ティアラーナの眼前に大きな掌が現れて、流す涙を隠すように覆った。
「…何度でも言うよ。…愛してるよ、ティアラーナ。俺の全ては君を手に入れる為に手放した。…帰ろう、家に。ゆっくり話そう。後悔なんて無いって事を何度でも話すから。」
そう言うロンバートに、ティアラーナは抱きついた。
そのティアラーナを抱き上げ、涙で光る目尻に口付ける。
「…じゃあ、俺達は帰るよ」
ロンバートは2人に別れを告げ、その場を去った。
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