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「ドレスにお肉がのってても笑わない?」
「こんなに頑張ってるのに、笑うわけないでしょ。っていうか、のってないから大丈夫」
私のことを一番に考えて、大切に思ってくれる人。そして私自身が大切にしたい、理解したいと思える人に出会えたことは奇跡のような出来事。
「さっ、帰ろう」
「うん……お腹空いちゃった……」
「じゃあ結婚式までは、たんぱく質多めのヘルシーメニューにしよう。それに食後に一緒にウォーキングする?」
「……いいの? 仕事の後だし、疲れてるんじゃない?」
「まぁちょっとはね。でも一緒に頑張った方が、いつか振り返った時にきっといい思い出になるよ」
今までは悩みがあると、すぐに親や友達に相談していた。でも結婚すると、心の拠り所が変わることに改めて気付く。
「でも、私がここにいるってよくわかったね」
「だってここは二人が出会った場所だし。みーちゃんにとってここが大切であるように、俺にとっても特別な場所なんだよ」
この公園で美衣子が優樹に声をかけたことから始まった。こうして二人でいることで、同じ場所でも新しい想い出が増えていくのだと思うと温かい気持ちになる。
優樹は立ち上がると、美衣子に優しく笑いかけた。その笑顔に荒んでいた心も癒されていく。
「ねぇ優ちゃん、結婚式が終わったら、前に行った焼肉屋さんに行きたいな」
「いいね、行こうよ。あとはラーメン屋とか?」
「うんうん、なんだろう……一週間後楽しく頑張れる気がしてきた」
マイナスがプラスに変わる。こんな発想、私一人じゃ絶対に出来なかった。二人でいるからこそ、ポジティブになれることがあるのだと知って嬉しくなる。
きっとこれから迷うことがあったとしても、この手が私を導いてくれるーー美衣子はそう確信し、手を繋いだまま家までの道を歩き始めた。
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