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その後、私が目を開けると――目の前には一面の青空が広がっていた。
と、頭の下で固いコンクリートの感触がし、慌てて我に返る私。
「ここ、は……屋上?っ、侑李達は?!」
先程までの出来事を思い出し、私は周囲を見回した。
と、直ぐ近くに侑李達が倒れ込んでいるのに気付く。
どうやら、3人とも無事な様だ。
ほっと胸を撫で下ろす私。
すると、視界の隅でキラリと光るものがある。
近付いてみると、それは粉々になった風鈴の破片だった。
しかも、黒かった筈の百合の花が、白に変わっているではないか。
(もしかして……私が、自分の為じゃなく、人の為に嘘をついたから?)
――いや、それとも、嘘を捨て本音で話したからだろうか。
ともあれ、私を嘘の女王にしてくれた風鈴は完全に壊れてしまった。
でも、不思議とその時の私に未練はなかった。
「今までありがとう。もう、私は大丈夫だから」
私はそう告げるや、そっと風鈴の欠片を一撫でする。
瞬間、
チリーン。
大きく鳴り響く涼やかな風鈴の音。
同時に、風鈴の欠片が美しい光の粒子になって空に消えていく。
私は、それを見送りながら、倒れている友人達の隣に腰掛けた。
(2人が起きたら、あの風鈴の話をしよう)
――もしかしたら、また、嘘だと思われてしまうかもしれないけれど。
それならそれで、構わない。
これからは、私は私の言葉で話してみよう。
そう心に決め、私はほんのちょっとだけ、風鈴の消えた空に向かって微笑んだ。
【完】
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