小説家へ

手紙

　貴方は書きたいものがあるから、物語を書くのでしょう。書きたい設定が出来たから、自分の感情や思想を表現したいから、人々を感動させたいから、他にも連ねたらキリがないですが、それら全て自分の我儘のように思えます。決して我儘なのが悪いと言いたいわけではないです。そこだけは履き違えないでください。

　しかし、貴方はその書きたいものを全て表現できていますか？私には分かります、決してそんなことが出来るはずがないと。貴方が言葉足らずで終えてしまうことも。いくら言葉で紡ごうとも無理があります。日本語の五十音、ましてや人間が知ってる語彙力となれば尚更でしょう。

　設定を考えて、プロットを作って、辞書引いて、文字を書き連ねる所を私は小説の中から見ていました。時には投げ出してしまう日もありましたね。しかし、貴方は知らないでしょう。休載していた私の物語が動き出した時、私がどれほど嬉しかったのか。