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「さっきのメイドが、『お嬢様の服を運んでいる』って言っていたから、たぶん、小さなレディの衣装部屋……かな?」
あまりにも大量の箱を忙しなく運んでいたのを見かけて、黒柴も魔法で箱を浮かせて運ぶお手伝いしていたのだと言っていた。
「ぼくたちのレディのためなら、このくらい手伝うよ」
近くまで来てお座りして弾んだ声で告げる黒柴の尻尾が、相変わらずピョコピョコと可愛く揺れているので、その頭を撫でさせてもらった。
柴犬だから毛は硬いかもしれないなと思ったんだけど、黒猫に負けないくらいふっわふわでやわらかくて、すぽっと手が埋もれてしまうくらい、もっふもふ。
「ふわもこだぁ」
感動から、思わず呟いていた。
「『ふわもこ』? それがぼくの名前?」
「ちが……今のは毛がふわふわだったからで……」
大精霊様に、ふわもこだなんて、そんな名前を付けるわけにはいかない。
「お嬢に名前をもらうのは、おれが先だからな!」
そう告げた巨大な黒猫がくるんと移動して、黒柴の首根っこを咥えて、黒柴を撫でていたわたしから引き離してしまう。
少し歩いてぺいっと咥えていた黒柴を解放して床に下ろし、「このままじゃ話せない」と呟いていた。
「レディ、この黒猫の次でいいから、ぼくにも名前を付けてほしい。キミに名前をもらわないと意味がないんだ」
解放されて即座に移動して黒猫に並んで歩きながら、わたしを見上げて告げてくる黒柴わんこ。
その時のわたしは、人間に勝手に呼ばれていたあの名前がよっぽど嫌だったんだろうなくらいにしか思っていなかったけれど、この時もっと早く追加シナリオの内容を思い出せていたならば、未来は変わっていたのかもしれない。
まあでも、悩みに悩んで彼らに名前を付けた未来のわたしが後悔していないから、結果オーライなんだと思うの。
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