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また夢を見ていた気がする。
「……約束の……真実……」
寝ぼけていたわたしの額に、もふっとぷにっとした感覚がして、それが黒猫の前足であると気づいた。
「お嬢は、そういうの気にしなくていいからな」
そう告げて、黒猫姿の大精霊様は、にぱっと笑う。
わたしがベッドの上で起き上がると、黒猫は軽やかにカーペットが敷かれている床へと降り立つと、最初に出会った、幼女のわたし程度ならば背に乗せられるくらいの巨大にゃんこ姿に変化した。
「背中に乗っていいぞ」
そう言いながら、魔法でわたしの体をふわりと浮かせて、そっと背中に乗せた巨大黒猫は、扉に向かいゆっくりと歩いていく。
その時に、部屋にあった姿見に映った今世のわたしの姿は予想通り幼女で、ふわふわで艶やかな淡い金色の髪は、一部の毛先が桜色で、瞳の色は緑から青にグラデーションがかかっている不思議な色だった。
ゲームに登場していた精霊姫をさらに幼くしたような見た目なことからも、今世のわたしの転生先を確信する。
わたしを背中に乗せて歩く黒猫は、部屋の扉を魔法であっさりと開けて、外へと歩いていく。
わたしが身長が足りなくて開けられずにあんなに苦労した屋敷の扉問題をこうもあっさりと魔法で……やっぱりこの黒猫が大精霊様なのだと改めて感じた。
「ルミナスお嬢様っ、お目覚めになられたのですね! すぐに旦那様と奥様に知らせて参りますわ」
部屋を出てすぐのところで、黒い柴犬……に擬態している大精霊様と共に別の部屋から出てきたメイドらしき女性と出会い、わたしたちの姿に気づいた推定メイドさんは、一礼すると黒柴をその場に残してどこかへと駆けて行ってしまう。
「そこ、何の部屋なんだ?」
巨大な黒猫が、通常サイズの黒柴に問いかければ、黒柴は、くりんと丸まった尻尾をブンブンと可愛らしく揺らしながら、まだ開いたままだった部屋の扉から部屋の中に視線を向けて、再びわたしたちへと視線を戻した。
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