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「これ、絶対秘密の話なんだけどよ」
俺の家に遊びに来ていた鮎川雅史が真剣な顔で話しかけてきた。
「和希、絶対誰にも言うなよ」
俺の名前は早瀬和希。二十歳の大学生だ。
「なんだよ、真剣な顔して」
「浜の岩窟あるじゃん?あそこって扉ににおっきな南京錠かけて入られないようになってだろ?」
「あぁ、そうだな」
浜の岩窟とは、近くの浜辺にある大きな岩にポッカリと穴の空いている場所がある。そこに鉄格子の扉がつけられ、中に入られないように出来ている。
磯にあるので、潮風に晒されて太い鉄の格子状の扉は錆びているが、簡単に開く感じもなかったし、子供の頃、友達と好奇心で見に行ったりもしたが、大きな南京錠を引っ張っても開くことはなかった。
岩窟の奥にはなにがあるのか、色んな人に聞いた事があったけれど、誰も知らない。
「あの鍵、夜中2時22分になると開くんだって」
「え?どゆこと?」
「誰かが開けに来るんじゃなくて、勝手に開くらしい。それから、中に入ったら、奥の岩の上に、黒い箱が置いてあって、その箱の中を覗くと、女の子が現れるんだって」
俺は顔をしかめた。
「誰から聞いたんだよ、その話」
「田中。田中は、色んな土地の怖い話を研究している他県の人から聞いたらしい。まぁ、ウソかホントか分からない話だよ。だって地元に住んでる俺らでも、あの岩窟が何なのか知らなかったのに」
鮎川はフンと笑う。
あまり信用していないようだ。
「しかも、続きがあってさ、この話を聞いた人は……」
「おいおい!俺を巻き込むなよっ」
その手の話は俺は苦手だ。
「まぁ、和希、聞けって。この話を聞いた人は、3日以内に岩窟の鍵をあけて、黒い箱の中におもちゃを入れて帰らないといけないらしいぞ、1人で」
「えっ!やめてくれよ!最低だな、お前っ!」
鮎川はニヒヒと笑い、俺を巻き込んだ事を喜んだ。
「ちなみに、田中は先日それをやってきたらしい。ちゃんと南京錠開いたって」
「マジかよー…俺、そういう話嫌いなの知っててお前…」
鮎川は俺の背中をバシバシと叩く。
「だーいじょうぶだって!ちなみに俺は信じてないから行かない」
「行けよっ!鍵開いたんだろ!?絶対マジだって」
真剣に怒る俺に、「怖がりすぎだろ!」と言いながら鮎川は大きな声で笑った。
ちなみに、今日が3日目らしい。
「いや、俺は3日経ってもなにもないって事を信じるね。だって、こんな話なら、俺らが小さい頃から広がってるはずじゃん?しかも、昔、中には入れなかったけど、肝試しに行っても何もなかったじゃねーか」
「こんな小さな田舎だし、秘密にしとかないと、呪われるとかあるから、広まらなかったんじゃないのか!鮎川、とにかく今日行けって!」
心配する俺に「田中にもこの話は秘密だと言われたけど、俺はお前に話しちまった。でも、お前は内緒にしとけよー!」と軽くそう言い、帰ってしまった。
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