甘い石榴と蛇の舌

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サイレンが、近づいて来る、 野次馬のざわめきが、 耳に、より溢れる、 軽トラックのドァが乱暴に開き、 中から、這いずりながら、運転手が、 出てきた、 男の額から、僅かに血が流れている、 ドァから、出てきた男は、半開きのドァ前に立ち、左右に、大きく頭を振った、 虚ろな目が、廻りを見渡している、 囲む群衆の中、 男の虚ろな目が、私を捉えた、 「…お、お嬢さん、申し訳ありませんでした!」 軽トラックの運転手は、ふらりと 身体を揺らし、私に走り寄る、 私は、 -じりじりっ-と後ずさる、 男は、 私の足元で、縋るよう、アスファルトに手をつき、頭をこすり付ける、 「本当に、申し訳ありませんでした!」 -わぞとらしい- 単純に、感じた感情だ、 この男は、 卑怯者だ、 己の過失を、消そうと、無かった事にしようとしている、 罪から逃避する為なら、何だってする、 懇願している素振りだけ、本心なんかじゃない、 「…偽善者」 私の口が、軽トラックの運転手に、小さく放った、 たしかに、 今回の事故に、人的な、肉体的被害者は、いない、 轢かれそうになった私、 壊れ削れたブロック塀、 壊れた、軽トラック、 結果的に、誰かが巻き込まれ、人間がが死んだ… そんな事実はない、 しかしそれは、あくまで、結果に過ぎない、 -私は、この男に、殺されていたかもしれない- 突然、襲ってきた、現実感、恐怖感、身体の震えが、とまらない、 「あんたが起こしたのよ!」 「あんたが起こしたのよ!」 「あんたが、私を轢き殺そうとしたのよ!」 私の喉が、込み上げる怒りを、大声に変える、 「この、事故の現場を、よく見なさいよ!」 私は、叫んだ、狂ったように絶叫した、 パパに、強く抱きしめらる、 自分で、抑えられない、この昂ぶる感情、震えのとまらない身体、 目の前で、あの野良猫が、 赤黒い血溜まりの中、ぼろ雑巾のように投げだされいる… 私は、 その悲しい姿を、 何か、酷く汚れた物体と感じた、 胸がむかつきだす、 胃が締めつけられ、その場に、しゃがみ込んだ、 -ウ、ウゲェーッ!- 胃の中身を吐き出した、 汚物を吐き出した唇から、 よだれが、細長く糸を引き、アスファルトに垂れている、 アスファルトについた、私の左手の甲に、涙がすまなそうにこぼれ落ちた、
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