0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
エイプリルフールの告白
「俺と、付き合ってほしいんだ」
いつも一緒に遊んでいる真枝から告白された。
4月1日の今日は、幼馴染の優奈と真枝と三人で遊んだ。
その帰り道、二人きりになった時だった。
私たちは高1の時に同じクラスになり、そこから仲良し3人組だ。
薄々、真枝は私のことが好きなのかな、と思っていた。
できれば、友達として仲良くしていたかった。
”今日はエイプリル・フールだから、今の告白は嘘でした!”の方がありがたい。
「ごめんね。真枝くんのことは、本当にいい人だと思ってるんだけど、友達でいてほしいな」
彼氏彼女になれないことに、強い理由はない。
”友達として、とても好きなのであって、彼氏として二人きりは気まずい”のだ。
真枝は何も悪くない。
「そっか……ごめんね、困らせるようなこと言って」
「こちらこそ。変わらず、仲良くしてくれたら、嬉しいな」
今日のことが、なかったかのように接してほしい。
♢♢♢
親友の優奈は、真枝のことが好きだった。
優奈もいい子だ。
優奈のために真枝を振ったわけじゃない。
でも、優奈を傷つけてまで真枝と付き合いたいとは思わない。
私は真枝が自分に告白してきたことを、誰にも言わなかった。
数日後、優奈から真枝のことについて話があった。
「真枝君に告白したら、振られちゃった」
「そうなんだ。残念だったね」
優奈の報告はあっさりしていた。
優奈は真枝が好きで、真枝は私が好きで、私は優奈を親友として好きだという、微妙な三角関係ができた。
こんなんで、また一緒に遊べるんだろうか?
♢♢♢
しばらくして、真枝には彼女ができて、優奈には新しく好きな人ができた。
三人一緒は少なくなったが、真枝とも仲はいいし、優奈も新しい恋を楽しんでいる。
恋愛体質の二人が羨ましい。
私は相変わらず、”仲良くなった人に好かれやすい体質”だ。
相手は誰一人何も悪くないのに、振り続けている。
相手も苦しいかもしれないが、気を遣って振るこちらも苦しい。
振る側の苦しさは、あまりわかってもらえなさそうだ。
ただ、皆で仲良くしていたいだけなのに。
恋愛が絡んで、男女が意識されると気軽でなくなってしまう。
たとえば、友達が好きになった男の子には、話しかけづらくなる。
本当はもっとその男子とも話してみたかったのに。
仲良くなったらなったで、周りから冷やかされるのも嫌だ。
自分が恋愛上の女として見られるのは不快だった。
友達に気を遣い、仲の良い男子とはいずれ距離を置かなくてはならない。
恋愛というものがこの世に存在する限り、私は孤独なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!