エイプリルフールの告白

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エイプリルフールの告白

「俺と、付き合ってほしいんだ」 いつも一緒に遊んでいる真枝から告白された。 4月1日の今日は、幼馴染の優奈と真枝と三人で遊んだ。 その帰り道、二人きりになった時だった。 私たちは高1の時に同じクラスになり、そこから仲良し3人組だ。 薄々、真枝は私のことが好きなのかな、と思っていた。 できれば、友達として仲良くしていたかった。 ”今日はエイプリル・フールだから、今の告白は嘘でした!”の方がありがたい。 「ごめんね。真枝くんのことは、本当にいい人だと思ってるんだけど、友達でいてほしいな」 彼氏彼女になれないことに、強い理由はない。 ”友達として、とても好きなのであって、彼氏として二人きりは気まずい”のだ。 真枝は何も悪くない。 「そっか……ごめんね、困らせるようなこと言って」 「こちらこそ。変わらず、仲良くしてくれたら、嬉しいな」 今日のことが、なかったかのように接してほしい。 ♢♢♢ 親友の優奈は、真枝のことが好きだった。 優奈もいい子だ。 優奈のために真枝を振ったわけじゃない。 でも、優奈を傷つけてまで真枝と付き合いたいとは思わない。 私は真枝が自分に告白してきたことを、誰にも言わなかった。 数日後、優奈から真枝のことについて話があった。 「真枝君に告白したら、振られちゃった」 「そうなんだ。残念だったね」 優奈の報告はあっさりしていた。 優奈は真枝が好きで、真枝は私が好きで、私は優奈を親友として好きだという、微妙な三角関係ができた。 こんなんで、また一緒に遊べるんだろうか? ♢♢♢ しばらくして、真枝には彼女ができて、優奈には新しく好きな人ができた。 三人一緒は少なくなったが、真枝とも仲はいいし、優奈も新しい恋を楽しんでいる。 恋愛体質の二人が羨ましい。 私は相変わらず、”仲良くなった人に好かれやすい体質”だ。 相手は誰一人何も悪くないのに、振り続けている。 相手も苦しいかもしれないが、気を遣って振るこちらも苦しい。 振る側の苦しさは、あまりわかってもらえなさそうだ。 ただ、皆で仲良くしていたいだけなのに。 恋愛が絡んで、男女が意識されると気軽でなくなってしまう。 たとえば、友達が好きになった男の子には、話しかけづらくなる。 本当はもっとその男子とも話してみたかったのに。 仲良くなったらなったで、周りから冷やかされるのも嫌だ。 自分が恋愛上の女として見られるのは不快だった。 友達に気を遣い、仲の良い男子とはいずれ距離を置かなくてはならない。 恋愛というものがこの世に存在する限り、私は孤独なんだ。
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