07.嵐の夜

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お風呂から上がると、リビングでアイス。 また甘いものを食べて、なんてお母さんの声が聞こえてくることもない。めずらしく自由な時間に、楽しくなってくる。 明日は土曜日だし、夜更かしだってできる。こんなことならいろんなお菓子を買ってくるんだった。 私はこの状況を楽しんでいた。 でも、しばらくすると退屈になってくる。部屋にいるのも寂しくて、リビングでテレビをつけたままソファに寝転がった。 「……雨、まだすごいなあ」 突然部屋中が閃光で明るくなり、びくっと肩が震えた。 少し遅れて、激しい雷の音。 「きゃあ!」 咄嗟に耳を塞ぐ。 それから次々と空が破裂しているような音が何度も何度も鳴り始める。耳を塞いでいても聞こえるほどの轟音。 「龍くん、早く帰ってきてよ……」 弱々しい声が漏れた。 いつもだったら、そろそろ帰ってくる時間。 でもこの雨だ。龍くんまで帰ってこないことになったらどうしよう。 じわりと目に涙が浮かぶ。 その時、玄関から物音がして、すぐに玄関先に走った。 龍くんの姿が見えると、両手を広げて彼に抱き着く。 「……龍くんっ!」 「うわっ! 春菜どうした? 濡れるから離れろ」 確かに龍くんの身体は濡れていて冷たい。でもそんなことはどうでもよかった。 「……雷、怖い」 「おばさんたちは?」 「この雨だから、帰ってこないって」 龍くんに抱き着いたまま答える。 「……そうか。ごめん一人にして」 龍くんの手が背中に回り、ぎゅっと抱きしめてくれる。 冷たいのに、あったかい。 こんなの初めてだった。
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