花見の始まり

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花見の始まり

花見とは、本来、散る桜を眺めながら、死んだ人を、送るために行われたのが始まりだった。それが、今では、ただ、騒ぐだけを目的とする花見ばかりとなり、故人を懐かしんで厳かに花見を楽しむことはなくなってしまっていた。 だが、いまでも、よく見れば、地面の上に広げたブルーシートの上に故人の好きだった御馳走を並べて、静かに花見をしている集団を見かけることがあるだろう。そういう集団は、故人のために一人分の隙間を空けて座り、誰もいないのに缶ビールや、紙の皿に御馳走をよそって、まるでそこに誰かいるように花見を楽しんでいる。時々、花見で騒ぎすぎて急性アルコール中毒で倒れて救急車で運ばれるバカ者は、そういう花見の本来の意味を忘れて羽目を外し過ぎたお仕置きにあの世に連れて行かれそうになったのかもしれない。
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