空腹の幻影

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「どうだい、柴田さんの様子は」  VRを付けた老人の様子を、モニター画面で見守っていた介護士は、上司の言葉かけに振り向いた。 「どうやら、落ち着かれた様子です」  女性の介護士は、上司である男性にそう答える。 「そうか……」  介護士の返事に、上司は短いため息を吐く。 「柴田さんは、度々これだな。4Dの活用もあまり使い過ぎると、また上が煩いし」 「実際、ご飯を食べられた後も、『ご飯を食べてない』と言い放たれます。自分の主張が通らないと、暴れて暴力も振るわれますし」 「そうだな……殴られた介護ロボットは大丈夫か?」 「『象が踏んでも壊れない』って言うキャッチコピーに嘘はないですね。まったく異常は見られない、とのことです」 「了解」
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