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いや、揺れているのは髪だけではない。体全体がゆらゆらと揺れながら、少しずつ回転している。喉元には一本のロープがあり、それがクローゼットに備え付けてある銀色のハンガーパイプに繋がっていた。キイ、キイと音が響く。パイプがぶら下がる女の体重に悲鳴を上げている音だった。
黒髪は顔全体を覆っており、目元は隠れているものの、隙間からだらりと伸びた赤い舌があった。
見せているようだ、と九条は感じた。わざわざこんな場所で自分が死んだ姿を再現し、楽しんでいるように見える。悪趣味さに少し眉を顰めた。
「ここで何をしているんですか」
九条がそう声を掛けると同時に、ふっと目の前の女が消える。だが、不穏な空気感は残ったままなので、すぐさま九条は振り返って部屋中を見回した。
伊藤の近くにはいない。ではどこか? 視線を動かし、その姿を探す。
ふと、すぐそばにある廊下へ通じる扉が気になった。向こうから何やら物音が聞こえる気がしたのだ。九条はドアノブを握り、その扉を開けた。
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