エピローグ

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エピローグ

 会議が終わり、急ぎ足で図書館に向かって走った。 「先生、さようならー」 「はい、さようなら!」  すれ違う生徒たちに挨拶をするが、いつも以上に声が上擦ってしまう。  翼久と再会してから一年。あの濃密な三日を過ごした後に、二人で暮らせる広い部屋を借りて同棲を始めた。  そして今日、翼久から突然『仕事が早く終わったから、久しぶりに学校の図書館で待ち合わせしよう』とメッセージが届いたのだ。  二人の思い出が詰まった図書館で待ち合わせだなんて、嬉しくて胸が高鳴る。  図書館に到着すると、司書の山村がにこにこしながらつぐみを迎えた。 「あのっ……」 「籠原くんなら、書庫で待ってますよ」 「ありがとうございます!」  それにしても、教師しか借りられない書庫の鍵を翼久くんに渡すだなんてーー不思議に思いながら階段を上っていき、書庫の重たい扉を開ける。 「翼久くん、いる?」  螺旋階段の上から声をかけると、 「下にいるよ!」 と翼久の声が響いた。  しかし翼久本人の姿は見えず、つぐみは本棚の隙間にも目を遣る。あの日からここに来るのが怖くなり、ほとんど足を踏み入れていなかった。 「翼久くん、どこ?」  床に足をついたその瞬間、突然背後から抱きしめられ、つぐみは体をビクッと震わせる。 「翼久くん⁈」 「あはは! 驚いた?」 「驚いたよ……隠れてたの?」  つぐみはくるりと振り返ると、翼久の表情を見てドキッとした。彼は真剣な眼差しで、真っ直ぐにつぐみを見つめていたのだ。
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