6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
12の位置を通り過ぎた秒針を睨みながら、あたしは30分前の自分を呪う。
皿の上にはまだ半分近くのチャーハンが残っていた。そんなに食の太い方でないことを省みるべきだった。
また同じことを繰り返している。思い付きで何かを始め、結局投げ出してしまう。そうやって、これまで何一つ成し遂げることができなかった。
いや、あたしのことはいい。可哀想なのは甥っ子だ。せっかく外食をしに来たのに、喧嘩腰の挑戦に巻き込まれて、ゆっくりラーメンを味わうどころではなかっただろう。
敗北感と申し訳なさに打ちひしがれるあたしの元に店主が声をかける。
「時間切れになったとは言え、最後まで食べて行ってくださいね。残されるとこっちまで気分が悪い」
『早食い競争』のようなイベントを開催しておいてよく言う。食べ物を粗末にするな。そんな憎まれ口を叩くこともできない。
押し黙ったあたしの代わりに店主に声をかけたのは、甥っ子だった。
「レンゲ、もう一つもらえますか? マキちゃんと一緒に食べたいんです」
店主は小さいレンゲを一つ持って戻ってきた。
「……子どもの方が利口じゃないか」
余計な一言を付け加えて。甥っ子は冷えて固くなったチャーハンの山に手を付ける。
「おいしい……」と口にはするが、ペースはあまり早くない。恥ずかしさで顔が火照った。
一回りも小さな子どもにまで気を遣わせている。相変わらず、他人に迷惑ばかりかけている最低な大人だ。
最初のコメントを投稿しよう!