泣けない君は、嘘もつけないから

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「いいんですか、あんなこと言って」  ミラが帰ったあと、ハヅキは問う。 「ミラ、綾瀬くんのことが好きなんじゃないですか」 「だろうな」 「ミラを個人所有にでもするつもりですか」 「無理だろ。綾瀬は大学生だ。そんな経済力ないだろ」  直接会ったことはないが、ミラのトラブルのおかげで、綾瀬のことはコミュニケーション・スクール通じて情報だけはよく知っていた。ごく普通の大学生で、人とうまく話せない極度の人見知りで、それを克服するためにスクールに通っている、真面目で寡黙な青年。悪い男だとは思わないが、正直、周りが見えていないと思う。  ミラがいま契約しているコミュニケーション・スクールでは、様々な役割の担当者と様々なシチュエーションを学ぶ。得意不得意を探りながら、カウンセリングなんかもする。その中でミラは友達という役割らしいが、どうにも恋人未満みたいな関係になりがちらしい。  今まではミラが断っていたからなんとかなってきたが……まぁ、色々あり、スクールからたびたび連絡は入ってはきたが……綾瀬の場合は違う。ミラが断れないからだ。
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