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「仮に」黙って考え込んでいた若槻が口を開いた。「嫌がらせはそいつだとしても、鮫島さんを殺したのはそいつとは限らねえ。そんな野郎に黙って刺されるようなタマじゃねえだろうが」 「──だったら、本人に聞いてみればいい」今まで黙っていた美桜が突然そう言った。  美桜の言った言葉は突拍子のないことのようだけど、確かに本人に聞ければ一番早いだろう。  そいつはまだ近くにいるとしたら、それは何故? 普通なら逃げ出したいはずだ。捕まったらどうしようって思うはずだ。そういえばそいつは鮫島さんが死んだかどうか知らないんじゃないだろうか。だとしたらそれを確認したいと思ってるのかもしれない。 「ねえ若槻……サン」 「あ?」 「鮫島さんの死体ってどうなったの? 警察呼んだの?」 「呼ぶわけねえだろ。死体はウチの奴らが隠して持って行ったし、後は掃除屋に任せた。仮に警察が来てどんなに調べてもそこで人が死んだ証拠なんて一切出ないわ」 「そっか」やはりそいつは鮫島さんがどうなったか気になるはずだ。若槻は不思議そうな顔をしてまだ私を見ていた。だから思ったことを言ってみた。 「──まあ、それは考えられなくもねえが」若槻はイマイチ信じてないみたいだった。 「わたしはあると思うな」心春は頷きながら言った。「絶対見に来ると思う。そいつが鮫島さんを殺そうとしてたなら、どうなったか絶対気になるもの。ドラマとかでもあるじゃん、犯人は現場にあらわれるって」 「また朝に来るんじゃないかと思うんだ。だから見張ってみてもいいと思う」 「逆に警察呼んだら?」心春は思いついたように言った。 「冗談じゃねえわ。それにビビって逃げ出すかもしれねえだろ」  そっか。心春はそれもそうかと納得していた。 「だから明るくなる前から見張ってみたらどうかな」私の提案に心春は何度も頷いた。美桜も頷いた。若槻はいい顔はしてなかったけど。そういえば何で若槻ってここにいるんだっけ?
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