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私も自分のスマホでそのアカウントを追った。その投稿を丹念に眺めた。
「──杏はどう思う?」しびれを切らせた心春はそう口を開いた。
「若い、男。おじさん構文が出てこないから」
「男だと思う?」
「思う。僕って書いてあるのはおいといても、撮ってる写真とか女じゃないなって」
「だよね。学生かフリーターってとこ?」
「まあ、そうだね。しかもイケてなさそう。もしかしたらボッチ系かも。学生か日雇いバイトじゃない?」
「だろうね」
「おいおい、お前ら何やってんだよ」若槻が口を挟んだ。「プロファイリングの真似事かよ?」
「プロファ?」
「なにそれ。私達はただいつものクイズやってるだけ」
「クイズ?」
「そう。テキトーなアカウント見つけてその人がどんな人か当てるクイズ」
「それはどうやって答えがわかるんだよ!」
「分かんないよ。ただの暇つぶしだし」私達は顔を見合わせて「ね」と頷きあった。
「でもたまに炎上したりして分かることもあるから」
「そんなに間違ってないと思うよ」
若槻は理解できないって顔をした。私達はこの暇つぶしが好きだった。二人でぐだぐだと言い合う。お金もかからないし楽しい遊びだ。それにたまに当たってるのが分かると嬉しい。
「そうか。なら若い男は分かった。なんで学生か日雇いバイトって分かるんだよ」
「サラリーマンのこと〈朝からお疲れさん、社畜〉って馬鹿にしてるし」
「あと時間だよね。だいたいは昼間からだけど、時々は朝から投稿してる。しかもだいぶ深夜までやってることも多いよね。そんなに自由のきく仕事ってなに?」
「まあ、そうか」若槻は渋々納得したようだった。
「しかもあんまり背は高くない」
「だね。背が低いことで炎上したアカウントに噛みついてる」
「太ってもいないね。デブを馬鹿にしてるし。おしゃれでもなさそう」
「だね。ジョガーパンツのこと知らなそうだし。全部スウェットって書いてある」
若槻は片眉を上げた。呆れてるのかもしれない。
「でも──最近、早朝の投稿が増えてるね」心春の言葉に私は慌ててチェックする。そうだ。いつもは深夜の三時くらいまで投稿している。そして次の投稿は昼くらいだった。ここ最近だけ深夜の投稿時間は変わらないのに、五時には投稿しているのだ。
「鮫島さんって朝、掃除するんだっけ?」私はそう言って美桜を見た。美桜はすぐに反応して頷いた。
「やっぱりコイツじゃない? 嫌がらせしてたのは。早朝に何か仕掛けて、それを掃除で出てきた鮫島さんが見つける」
「そうかも。すごく近くに住んでるのは分かったけど」
そう、ここまでは分かったけれどここから先は特定のしようがない。気になるのは鮫島さんが死んだあとの投稿がないことだ。慌ててしまって逃げ出した? いや、そんなことはない。だったら何かを投稿するはずだ。
「──まだ、近くにいる」そう口をついて出た。
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