トメキチの娘

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 死さえ覚悟していた修は、拍子抜けした。 「あの、君はここまで泳いで来たの?俺は海に流されて、溺れそうなんだけど・・・俺、長山修といいます。どうか、助けてください」  この窮地から助けてもらおうと、修は恥を忍んで、その女に言った。  女は何も言わないが、しばらくすると修に近づいてきて、修の匂いを念入りに嗅いでいるようだった。  そして、修の絆創膏の剥がれた額の傷の匂いを嗅いでいたと思ったら、それを舐めたのである。  言葉が通じないのだろうか。  修はしばらく、その少女のようなその女にされるがままになっていた。  すると、女は一通り気が済んだのか、修から離れて行って、水中に潜ったかと思うと、勢いよく水中から飛び出してきて、飛び跳ねたのである。
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