合唱コンクール

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「おはよう」 「おはよう!柚紀!」 髭って……何歳くらいから剃る程生えてくるんだろ? 高校生じゃ、まだそんなに生えないよな? 大学生? 大学生になってからって考えたら、益々母さんに教えてもらうなんて変じゃないか? 「ん?どした?」 「髭って、何歳くらいから剃るんだろ?」 「はあ?なんで突然そんな事気になるんだ?」 「初めての髭剃りは、母さんが教えてあげるって張り切ってたけど、その頃ってもう、大学生とかなんじゃないのかな?と思って」 「なっ!……は……初めての髭剃りって……柚紀の母さんが?それは……是非俺も教えてもらいたいけど……じゃなくて!そんなの教えてもらわなくたって、出来るだろ。ってか、教えてもらうなら、父さんだろ普通」 「やっぱり佐野もそう思うよね?でもね、俺の父さんの髭は、母さんが言うには、レベル1だから、母さんの方が色々教えられるんだって」 「レベル1?……柚紀の母さんって何者?」 放課後、クラス全員で合唱の練習をする 皆で歌うのは楽しいんだけどなぁ 瑞紀を見てても思うけど、あの暗号の様な記号を見て、なんで両手があんな風に動くんだろう ピアノ弾ける人って凄い そんな、ある日の夜 コンコン 「は~い」 「ゆず、ちょっと話がある」 そう言って部屋に入って来た瑞紀の手には、封筒が握られていた 「何?」 「今日、俺が帰って来た時、これがポストに入ってた」 そう言って、封筒から出した手紙には、 「なっ……に?これ……」 すべて定規を使って書いたような文字で ピアノ ジタイシロ と書かれていた 「なんで……こんな…」 「さあな?だが、俺は辞退しようと思う」 「えっ?!せっかく練習してたのに?」 「この手紙……差出人も住所も書いてない。切手も貼ってないし消印もない。つまり、この家まで来てポストに入れたって事だ。たかだか合唱コンクールのピアノを辞退しなかったばかりに、この家の誰かに何かされるなんて、ごめんだ」 「瑞紀のクラスの誰かって事?」 「可能性は高いけど、分からない。俺が降りたからと言って、そいつに決まるのかどうかも分からないしな」 ピアノ……綺麗な音色なのに…… こんな事考える人が弾くなんて…… 「ゆずがそんな顔して考える必要はないよ。相談ってのはさ、辞退するにしても理由がいるだろ?怪しまれない様な理由が」 「うん……」 「だからさ、転んで左手首をひねった事にしようかと思って」 「手首を?」 「そう。病院行く位の怪我じゃバレるけど、ひねった位の痛みなら、自己申告だからな。まあ、明日にでもサポーター買って、それっぽく見せてさ。ただ、母さんに言うと心配するから、協力して欲しいんだよ」 「それは……いいけど……瑞紀、ほんとは弾きたかったんじゃないの?」 「ピアノを弾くのは好きだし、今回の課題曲も、けっこう好きな曲だけど、別に、合唱コンクールでどうしてもピアノが弾きたかった訳じゃないよ。だから、そんな顔すんな」 「うん……」 「それから、念のため、学校ではなるべく1人で居ない事。佐野君にでも頼んでおけ。学校帰りも、なるべく一緒に帰るようにしよう」 「……分かった」
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