雨宿り

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 土手に上がると、ピンク色の桜の木がザワザワと風に揺れていた。その中で、沢山の人達が楽しげに宴会をしている。 「焼きそばも買っちゃおうかな」  映画を一本観た後みたいに、胸が熱くなって、清々しく愉快な気持ちだ。  たこ焼きと焼きそばに、勢いでミニカステラまで買ってしまった。 「体重を増やし過ぎると怒られるんだよなあ」  でも、今日は食べて良い。だって、口下手な男性と想像力豊かな女性との縁を取り持つ事が出来たのだから。 「ご褒美よね」   歩きながらミニカステラを頬張る。甘くて素朴なカステラは、子供の時にお祭りでよく親にねだって買ってもらったとの同じ味がした。 「あなたも好きになるのかしらね」  お腹の子は眠ってしまったらしい。 「どんな名前が似合うんだろうね。会えるのを楽しみにしているよ」  身体についていた白い花びらがひらりと風に飛ばされていった。  「あの公園に人懐こい猫がいたのよ。年寄りの猫だけど、毛並みが綺麗だったわ。誰かに大事にされてたのね」 「まだ、いるの?」 「さあ……」   すれ違い様に、女性達の会話が聞こえた。なんだか、全部仕込まれていたのかもしれない。  振り返ると雨宿という名の桜の木がひっそりと佇んでいた。少しの間、雨宿りしていた野良猫はもうあの場所にはいない。   了
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