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 彼はラッピングを慎重に開けた。  人差し指の爪でセロテープをはがし、透明なフィルム状のラッピングの中からパンティストッキングを取り出した。  ストッキングの片足部分には厚紙が入っていて、彼は眉をしかめながら、厚紙を抜き取った。  ストッキングを破きたくなかったのだろう。    包装を解かれたストッキングは彼の手の中でくたりとしていた。しおれてしまっていた。  私の恋人は紐状のパンティストッキングを私に差し出した。肌色を捧げ持つように。  ストッキングの端っこの、足先の部分が、冷めた紅茶の中に入ってしまうんじゃないかと私は心配になった。 「これで僕の首を絞めてくれない?」  私は首を振った。私は恋人と触れ合いたいのであって、恋人の首を絞めたいんじゃない。  私の恋人はため息をついて天井を振り仰いだ。私も天井を見た。  ファンシーなカフェの天井には銀色の配管と、白いシーリングファン。  私は自分が彼の手からパンティストッキングを奪い取るところを想像する。  奪い取って天井に放り投げる。  パンティストッキングはシーリングファンにひっかかって、回り出す。  大きな扇風機、というより、小さめの風車みたいなシーリングファンにストッキングがぶら下がる。  ストッキングの肌色の端っこがだらりだらりと揺れている。  私は悲しい気持ちになって彼の顔を見やった。  彼は目にうっすらと涙を浮かべていた。  私はちゃちなテーブル越しに手を伸ばした。  彼の涙をぬぐってあげたかった。
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