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妻たちの提案
「また、タバコ吸ってるの?」
ベッドに座り男は電子加熱式のタバコを吸いながら後ろを振り返る。
そこには濡れた髪からポタポタと雫が滴り落ち、素肌にバスローブを纏った女が、こちらに微笑む。
「ああ、やめられなくてね」
男がそう言うと、女は隣に座り、裸になった男の厚く鍛えられた胸板を優しく撫でながら唇を重ねる。
男はタバコをデバイスから抜き取りサイドテーブルの灰皿へと捨てた。
そして女のバスローブを優しく肩から滑り落とす。
湯上がったばかりの女の肌は薄い白桃色に染まり、手のひらで撫でる女の胸は、指に吸い付き、火照った肌に汗ばんだ温もりを感じさせる。
男は女の首筋から愛撫し身体を重ねた。
この1連の行為をカメラに収めながら。
一夜を明かした女は男と唇を交わし自分の家へと車を走らせ帰って行った。
男は寝室に戻る。
部屋には、昨夜の甘美な匂いが漂い、淫らな行為の名残りがベッドの上に広がっていた。
男は昨夜の戯れに余韻を感じながらカメラのスイッチを切りSDカードを抜いてケースに戻した。
そして何事もなかったようにベッドメイキングをしカーテンを開けるとシャワーを浴びに浴室へと消える。
男は勢いよく身体にシャワーを当てながら、僅かに残る女の体臭を感じていた。
穂の香に残る女の体液を洗い流すように。
シャワーを終えて、リビングに戻ると妻が、お気に入りのカウチに座り微笑んでいた。
男は駆け寄り妻を抱きしめると唇を何度も重ねた。
「昨日は、どうだった?」
男は妻に問いかける。
「よかったわよ。」
妻は少し恥じらいながら答えた。
男が妻の首筋を仔犬のように嗅ぐと妻は恥ずかしそうに浴室へと消えた。
妻もまた男と同じように昨夜の余韻と穂の香に残る体液を洗い流すために。
そして何事もなかったように日常へと戻っていく。
寝室を指す朝日が、シワひとつないベッドシーツを明るく照らしていた。
リビングで声がする
「優作、早く食べないと遅刻するわよ!」
夫の青木優作はクローゼットからネクタイを1本選び手慣れた様子で首に締めると、キッチンへ向った。
妻の百合子は、愛する夫のために朝食を準備しテーブルに皿を並べる。
煎れたてのドリップコーヒーが、たちこめて辺りに香ばしい匂いを漂よわせている。
「優作、今夜、久しぶりのデートに行かない?」
百合子は可愛く優作に問いかける。
「ああ、仕事が終わったら急いで行くよ!」
優作は焼き立てのトーストを頬張りながら答える。
「ウフフ!愉しみに待ってるわ」
百合子は意味深に微笑み鏡の前で、リップをひいた。
しばし幸せな時間が流れ妻の身支度が整え終わる頃
優作は朝食で使った食器を食洗機にセットしジャケットを羽織る。
百合子は優作の腕に手を差し込み、腕を組むと
「じゃあ行きましょ!」
と言って鍵をかけ玄関を後にした。
都心のオフィス街は朝から雑踏につつまれている。
そんな都会でオアシスのように佇む人気のカフェには既に客が列をなしていた。
夫の長谷川透はテキパキとスタッフに指示を出し時計を睨みながら妻の様子を伺っている。
妻の麻衣子は注目のパティシエでスイーツの出来栄えに余念がない。
甘く柔らかなバターの香りと煎り立てのコーヒー豆の香りが店内を充満させ開店を待っていた。
麻衣子が最終のチェックを終え合図を出すと扉が開かれ、透はホッと胸を撫で下ろす。
本日のスイーツの出来栄えは良好だったのだろう。
麻衣子はスイーツの出来栄えにより開店時間を大幅に変える。
出来栄えに納得がいかないと何度もやり直すため、
透はこの開店前の時間が1番、緊張する。
店の扉が開かれると、ドッと雪崩込むように客が押し寄せ、あっという間に全てのテーブルは埋まる。
麻衣子は次の仕込みの準備をし僅かな休憩をとる。
休憩室に入りスマホを開く。
昨夜の非れもない行為を身体の奥に感じながらスマホの中に映し出される淫らな友人と夫の戯れを鑑賞しながら自らを慰める。
ここにも新たな1連の行為がカメラに収められていた。
かれこれ数十回と重ねられた淫らな行為の映像フォルダは秘密のライブラリに収められ、2組の夫婦の共有するクラウドで暗号キーによって管理されていた。
麻衣子は、このライブラリをチェックするのを朝休憩の日課にしていた。
甘く柔らかなスイーツの匂いに包まれながら一通り映像を見終わると慰めた身体から生暖かいジュースが、滲み出し下着を湿らせるのを感じた。
そして休憩室を後にすると、透に近寄り「やるわね」と、一言だけ耳元で囁やく。
透は、それだけ聞くとニヤリと微笑み自身の手指を眺めた。
時刻は夕方を過ぎ、空が薄暗く変わる頃。
優作は久しぶりのデートに行くため、日課のスポーツジムを諦め、いつもの所ヘ急いだ。
馴染みの洋食屋に着くとシェフに挨拶する。
ホールの奥に進み百合子を見つけると向かいの席に座った。
「早く終わったの?」
百合子が聞くと、優作は優しく答える。
「愛する妻を待たせると直ぐに悪い虫がよってくるからね」
百合子はウフフと意味深に微笑み優作の手にそっと手を重ねた。
しばらく談笑しながら夫婦水入らずの時間を楽しみ食事も終える頃。
珍しく、ねだるワインを百合子が飲み干すと艷やかな唇からリップシンクされる。
ク ロ ス ノ ナ カ ヲ ミ テ
優作は何かを察知しテーブル全体にかけられた白いクロスをめくり中を覗く。
そこには両脚を開きスカートの奥で一糸纏わぬ百合子が見えている。
その妖艶な百合子の姿に胸の鼓動を高鳴らせ優作はクロスから顔を上げると百合子は、またリップシンクする。
ハ ヤ ク ユ ウ サ ク ガ ホ シ イ
百合子は頬を紅く染め潤んだ瞳に色気を滲ませた表情をして優作を誘っている。
優作たちは、デザートを食べ終わるのを待たずに足早に店を出た。
人影の少ない路地から百合子の押し殺した声と荒々しい息遣いが響いていた。
2人は昨夜の違う相手との淫らな行為を互いに感じながら、
肌を合わす。
優作は服を着たままの妻を獣のように背後から荒々しく重ね合わす。
そして壁に押しつけるように果てると抱き合い唇を交わした。
2人は互いに違う相手との一夜を過ごした後、いつも激しく求め合った。
その頃、閉店したカフェの地下でも貪るように激しく求め合う夫婦が肌を合わせていた。
昨夜の余韻を感じながら。
この2組の夫婦が関係を持つようになったのは、半年前まで逆上る事になる。
僅かな希望を手繰り寄せるように2人の妻は引き寄せ合い関係を深めていった。
自らの愛する人を巻き込んでまでも関係を成立させ守りたいものがあった。
決して壊したくないものがあった。
愛と欲望を波瀾でいても。
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