◇ルーファス視点

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 何処となくきれいな顔立ちのルーファスとは違い、ブラムは精悍な顔立ちのたくましい男性である。そのためか、役柄があまり被らない。そんな二人は、実のところ世にいう幼馴染の関係だった。 「そんなことよりも。……大丈夫だったのか?」 「……もう、聞いているのか」 「あぁ、アレックスさんから、色々とな」  ブラムはルーファスの隣の椅子に腰を下ろして、ルーファスを見つめてくる。  その漆黒色の目は、なにもかもを見透かしているようであり、ルーファスの心がざわついた。  が、それを悟られないように、こほんと咳ばらいを一度する。 「……ということは、あのことも聞いたんだろう?」  ちらりと視線を向けて、さりげなくそう問いかけてみた。 「……ルーカスのことを、身を挺して庇った女の子のことか?」 「わかっているんだったら、それも言ってくれ」 「悪い悪い」  全く悪びれた風もなく、ブラムはそう言って笑った。  彼の言葉を聞きながら、ルーファスは少しだけお茶を飲む。 (……ヘレナ・メイプル、か。メイプル男爵家の末娘の名前だったな)  頭の中でちょっとだけ考えながら、ルーファスは自身の分のお茶を淹れるブラムに視線を向ける。 「こんなことを言ってはなんだけれど、お前は本当に女性に夢を見せるのが上手いからな」 「……その言い方だと、まるで俺が詐欺師みたいじゃないか」 「そんなことはないって、俺はわかってるよ。……それに、ここに所属している以上、それ以前に色恋沙汰はご法度だ」  ゆるゆると首を横に振りながらブラムがそう言う。  この劇場『アシュベリー』に所属する俳優や女優に、色恋沙汰はご法度である。  ほかの劇場はどうなのか知らないが、ここに関してはいろいろとややこしい決まりがあると聞いている。  もちろん、貴族の子息子女の場合、そう簡単な問題ではないのだが。
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