植物標本のような結婚生活

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植物標本のような結婚生活

 ラモトリギン錠100mg  セレニカR顆粒40%  ラツーダ錠40mg  エスゾピクロン錠2mg  エスゾピクロン錠1mg  エバミール錠1.0 1mg  ブロナンセリン錠4mg  僕の名前は雨宮 理玖(あまみやりく)(25歳/男性)僕はこの薬を服用し、突然現れる衝動的な感情や行動に蓋をしなければならなかった。そして日常という水の中に静かに(なり)を潜める。 双極性障害1型 双極性障害2型  国外では100人に一人、国内では500人に一人の割合で発症する。 「寿命は一般的な平均年齢よりも8歳から10歳短いと言われています」  僕の脳の一部は月が地球に引き寄せられるようにゆっくりと萎縮していた。  21歳の春、体調を崩して心療内科を受診した。当時の医師からは「心の風邪」と診断され処方された薬を服用していた。ところが症状は悪化し身体は泥に沈み込み表情は凍り付いた。 「無理です、退職させて下さい」  僕は勤務していた保育園に退職届を提出した。  精密検査の結果、僕は双極性障害2型と診断された。「心の風邪」とは異なる病気でそもそもの治療方法が間違っていた。そして僕は症状に見合った治療を開始したが、半月に一度の通院、カウンセリングと薬代で受診毎に五千円札が財布から消えた。 「金銭的に治療を続けられないかもしれません」 「公的支援はご存知ですか」 「いえ、知りません」  ケアマネージャーは僕に障害者認定の申請を勧め、二ヶ月後に認定された。 「障害者手帳2級、障害者年金支給、自立支援医療費の補助が受けられます」  僕は治療に専念する余裕が出来た。 「ーーー税金を納めておいて良かった」  症状が落ち着いて来た頃、主治医は「環境の変化を避ける」「生活リズムの安定を心掛ける」「八時間睡眠」と無理難題を提案した。丁度その頃、辞めた保育園から復職しないかと打診があったからだ。 「うーーーん」  ひとしきり悩んでいると、誰かが扉を叩いた。
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