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I
ーーSide 茉莉絵
私の彼氏は気が利く。
女の子のやって欲しいことを全部知ってて先回りしてくれるような、そんな人。
昨日だってそう。大学の帰り、2人で散歩中に綺麗な桜があったからカフェで小粋なカフェオレとスイーツをテイクアウトしてお花見しようって。
そしたら彼、どうしたと思う?
持っていたハンカチを階段に敷いて「どうぞ」って。私の履いてた新品のフレアのスカートが汚れないように気を遣ってくれたの。普通そんなこと出来る? 出来ないよね! 私のことお姫様みたいに甘やかしてくれるの。
しゅき。
風がふわってして、桜の花びらが私の髪に付いて。払うために細い指先で私の頭に触れてくれたときなんて、もう。ドキドキして心臓が止まるかと思った。
風が出て来て少し寒くなって来たら小さなカイロで繋いだ手を温めてくれたし、荷物だって持ってくれた。
大切にされていると思う。
この小さなお花見は私の中では人生で一番綺麗なお花見だったし、もう彼は本当に私と出逢うために生まれてきてくれたんだって錯覚しちゃうくらい。
*
そんな話を私は親友のミキの家で話してるんだけど、ミキは浮かれる私に氷のゴロゴロ入った冷水をぶっかけるようなことを言い放った。
「ソレ、元カノの”教育”の賜物でしょ?」
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