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「余にも分からない。本当に森の奥に眠るのは美姫なのか。それとも待ち構えるのは魔物なのか。だが碑文として刻まれている。時を経て潰れて読めない箇所があるが、アンラの災厄についても書かれていたようだ」 「アンラの災厄……」 王の口から出たアンラの災厄については幼い頃から聞かされてきた。モルテザだけではなく大抵の者が知る伝説だった。 言い伝えによれば、アフラを倒そうとアンラが手下を従え、この世を闇で覆い尽くそうと企み、熾烈な戦いをくりひろげた結果、アフラが勝利したという。大地も海も荒れ、光は闇に圧され作物が枯れ、多くの人々が命を落とし、王国の繁栄が脅かされる事態となったらしい。 「ランプ、という文字も見えた。他で伝わるランプに住む魔神のことかもしれない。シェへラザードの話しを聞いて考えたのだ。この国にさらなる繁栄と安寧をもたらすものが森で得られるのだと。それは形のないものなのか。ひょっとして願いを叶えるランプの精なのか」 王はそこで言葉を切った。 「では、その答えを俺に持ち帰れ、と仰せなのですか? 」 訊ねた瞬間、魂の置き場所よりも深い、全身に点在する鋭敏な部分に恍惚感を覚えた。
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