桜よりも気になる存在

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   コンビニの店長も張り切っていた。酒を通常より多く発注して、フライドチキンの揚げ物なども何時もの倍以上準備していた。  スタッフも増やして(俺はシフトに入ってなかったんだが急遽呼び出されてしまった)客の受け入れ態勢は万全だった。  だが、コンビニに来る客はトイレを借りる奴らばかりだった。たまにセルフ式のコーヒーや、ペットボトルの水が売れるが、揚げ物や酒類は売れなかった。  このコンビニは直営店だ。店長は最近店にやって来たばかりだった。    店長にとって花見シーズンは初めての試みだった。どれだけ売り上げが伸びるのか皆無だったが、異動後、過去最高の売り上げが見込めると思ってソワソワしていたみたいだ。    しかし、多めに用意したものが残念ながらあまり売れなかった。レジャーシートを敷いて花見をする者は、飲食物などは前もって用意しているものだ。それにコンビニで購入するよりも、出店で購入する者の方が多いだろう。  そして、コンビニのトイレには長蛇の列が出来ていた。神社にはトイレがない。簡易トイレも設置されていなかった。必然的にコンビニに人が群がる。    人間という生き物は勝手なもんだ。トイレにずらっと並んでいたら怖いものなどない。いちいち店員にトイレを借りるために声を掛けることもなく、商品を購入することもない。当たり前になる。  まあ、それも仕方ないことだろう。  花見スポット近くに店があるのだから、腹を立てるのも可笑しな話だ。  だが……ムカつくこともある。  神社にトイレがないからコンビニに数回借りに来るのは、まあ仕方がない。  ……周りの人間とは比べ物にならない程、トイレを何度も借りに来てる奴が一人いた。  
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