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「こんにちは、お義父さん」
「創くん、こんにちは。陽毬も。2人とも上がんなさいい。今日はいい天気で良かったなぁ」
「お父さん、お父さんの好きなシュークリーム買って来たよ!一緒に食べよっ!美味しそうな紅茶も買ってきたよ。蜂蜜紅茶だって!」
陽毬は相変わらず明るく元気だ。
玄関からリビングへ行き、みんなでお茶の用意してから、最近のお互いの話で、わいわいと楽しく盛り上がった。
久しぶりのシュークリームも、少し高そうな蜂蜜紅茶も美味い。
「そうそうっ!私ね、創くんと、父さんにプレゼントがあるんだぁ」
「「プレゼント?」」
創くんとワシは声を揃えて言った。
確かにシュークリームの他に、何か紙袋を持ってきたなとは思っていたが。
「何か記念日でもあった?」
「ないよー、これね、2人に一箱ずつ!いつもお世話になってるから、ブランド物のハンカチだよ」
ワシと創くんの前に箱が置かれた。
開けてみると、ガーゼのハンカチ。
ブランドでもなんでもない。
陽毬はニンマリと笑い、「ふふふ」と微笑んだ。
ワシと創くんは、目を合わす。
「せめて、偽物のブランドのハンカチにしてよ」
創くんは笑った。陽毬も笑う。
ちなみにワシは最近よくくしゃみが出るのでガーゼのハンカチは大歓迎だったが、それはなんとなく言わない。
「次のプレゼントはこれです!2人とも絶対大喜びなプレゼント!期待してっ!じゃんっ!」
陽毬は、さっきより少し大きめの箱を袋から取り出し、ワシたちの前に再び置いて来た。
創くんとワシは再び箱を開ける。
すると出て来たのは、ワシの箱からはボディクリーム、創くんの箱からは出て来たのは、ボディソープだった。
「これは赤ちゃんからかなりの敏感肌の人が使えるものなんだよ。2人とも割と肌弱いし、使ってくださーい!あれ?あんまり喜んでないね?」
「いや、嬉しいんだよ、でも今なんでこれ…」
と、創くんは苦笑いだ。
「ふふふっ!今日は何の日?」
陽毬は両肩を少しあげて、微笑んだ。
ワシと創くんはカレンダーを見る。
そして、彼はパチンと手を叩いた。
「あっ!エイプリルフールか!」
「そうでーすっ!驚いた?」
ワシたちは、「なんだ」と笑い合う。
そうか、エイプリルフールか。
ワシもエイプリルフールのジョーク、なんか考えておけば良かったな。
その時、陽毬がもう一つ箱を出して来た。
今まで出して来た箱よりも1番大きな箱だった。
可愛らしく、リボンが結ばれてある。
「実はっ!これが最後のプレゼントです!これは2人で開けて?」
陽毬はそう言ったが、創くんが、「お義父さん開けてください」というので、ワシがあけた。
中から出て来たのは一枚の……写真?
白黒の、昔のテレビが壊れたかのような砂嵐にしか見えない物。
「なに、これ」
ワシが言うと、創くんは、それを横から見て、「エコー画像?」と言ってきた。
陽毬はコクンと縦に首を振る。
「え…もしかして」
創くんがそう言うと、陽毬が話し出す。
「私、6年前にさ、もう赤ちゃん作らないって言ったけど……アレもエイプリルフールになった。
私、また、今、お腹に赤ちゃんがいるよ」
陽毬は、お腹を両手で触れ、微笑んだ。
涙が勝手に出るというのは、こういう事だろうか?
ワシの目からは大粒どころか、滝のように涙が頬を伝って流れた。
人の前で格好悪いと思いつつ、嗚咽も止まらない。
「良かった!良かったなぁ!」
「始めの2回のプレゼントは、赤ちゃんへのヒントのつもりだったんだけど。
お父さん、すごい泣き方!もう、このガーゼのハンカチ使って!?」
あまりに泣くワシに、大笑いする陽毬。
ガーゼのハンカチを手渡してこようとするが、それを俺は箱に戻す。
「いや、これは赤ちゃんに使うんだ」
それを見ていた創くんも、ワシから貰い泣きしてしまい、目を片手で覆いながら、肩を震わせていた。
「ホントにこれはエイプリルフールじゃないよね?」
創くんの涙声に、「これはホントのホントだよ!お父さんも創くんもありがとう!私、いいお母さんになるね」
そういう陽毬の顔は、もうすでに母親の顔だと思った。母さんの笑顔にそっくりだ。
「今日はあったかい方だけど、まだ肌寒い。陽毬、ブランケットもってこようか?」
「あっ!陽毬ちゃん、あったかい飲み物用意しようか?おっと…カフェインない方がいいかな」
陽毬よりも、ワシと創くんの方が大慌てしている。
でも、こんな楽しい日々が更に続くと思ったら、娘夫婦の為に、勿論孫のために、親バカ(孫バカ?)になってもいいと思う。
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