苛立ち

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苛立ち

アイツの事が気になりながらも、迫る受験を疎かにするわけにはいかない。 今は、アイツのことを忘れて受験勉強に専念する事にした。 アイツが合格して、俺が落ちたなんて目も当てられない。 あんなことを言った手前、どうしても合格しなければならないと自らを追い込み、只ひたすら受験勉強に専念した。 そんな努力の甲斐あって、見事に合格を手に入れた。 アイツがどうなったのか、それは知る由もないが入学式にアイツがいるかどうかが楽しみだった。 もし、アイツが居なかったらアイツとの腐れ縁もこれ迄だと喜べばいい! 新しいスーツをオーダーし、入学式の準備も怠りなく済ませ、新居への引っ越しも無事に済ませた。 大学近くのマンションは最近完成したばかりの、セミオーダーマンションで、一人暮らしの学生には贅沢すぎる広さと快適さで、学生生活を楽しむには充分満足だった。 マンションから大学までの道すがら、スーパーもいいが昔ながらの商店街も買い物するには便利で人との会話も楽しめそうだ。 部屋の片付けも終わり、マンション周辺の探索も終わり、後は入学式を待つばかりとなった。 マンションは新築と同時入居の為、隣室への挨拶はしていないが完売となっていた。 いずれ、自分の手でマンションの設計も手掛けたいと思っているが、住人にとっては外観と共に内装のデザインやインテリアも重要な要素だと言う事が、自分が住んでみて実感する事になった。 そう言えばアイツはインテリア学科を希望していた、もし自分の設計した建物のインテリアをアイツが担当する事があれば・・・・・そんなありもしない妄想が浮かんだ自分に驚いた。 ずっと嫌いだと思っていたアイツの事が、これほど気になるのは長い間一緒にいたからに違いない。 小学校から高校卒業までの12年もの間、ずっとアイツと俺は一緒だった。 話をしたのは一度だけとは言え、嫌いだと思いながらどこかで気にしていたのかもしれない。 やっと、離れられるのに何故かアイツの事が気になった。 わざわざ呼び出してまで、あんな事を言わなければよかった・・・・・泣いていたアイツの事を思うと少しだけ胸が痛かった。
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