1.出会いは葵色

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1.出会いは葵色

  私の を誰にも邪魔されず自由に表現できるのは、ここ、東川高校の美術室。  別校舎の作業棟にある築50年以上の総檜造りで、趣のある教室に古い画材がたくさん。  美術の専任もいない一人だけの美術部。  4月になり3年生になっても、私は絵の為に学校に行くのを楽しみにしているような……不順な生徒だ。  美術室の入口で足が急停止。  何か、ある。  2列目の窓際の席。私がいつも絵を描く場所に、見覚えのない茶色の長ソファが置いてある。  ……予感。いる、そこに感じる。  私は恐る恐る足音を立てないように近づく。ソファの背もたれでその奥が見えない。近寄る程に高鳴る胸の音、ドキン、ドキン。 「わっ!?」  ソファに横たわった人影を見つけて全身を震え上がらせた。  綺麗な髪色… 青い髪なんて初めて見る…  ソファに仰向けで寝ている男子の青色に一瞬で釘付けになった。髪を部分的に青色のメッシュにしている。  青… 紺… 違う。…紫っぽい濃い青色。  そう、瑠璃(るり)… 例えるなら瑠璃色。  息を潜めてそおっと近付いて見る。  その知らない男子の頭に覆い被さるように眺めていたら、瞼にかかっていた長めの瑠璃髪の間から突然白眼がパッと開く! 「きゃっ!?」「なっ!?」  瞳も青っ…――――!!!  次の瞬間には鈍い音がして頭に響き渡った。  覗き込んでいた私のおでこと咄嗟に起き上がった男子のおでこがぶつかったのだ。  「ったぁーっ」男子のうめき声を耳にした時、ぎゅっとした目の奥では火花が散っていた。急いでおでこを擦って痛みを逃す。 「い"て〜。誰?あぁ、美術部…」  私がチカチカした目で男子を見ると、同じようにおでこを擦ってソファに大股開きで座りしかめっ面で見られていた。 「びっくりしたぁ。襲われるのかと思った」 「ち、違っ!か、髪の色が綺麗だなって…」 「あ、これ?カラーモデルってやつ。  いつも世話になってる美容師がやってくれたの。ブルーのカラコンも入れてカッコつけて写真撮ってもらった。今、青いのが流行ってるんだって」 「へぇ…」  瑠璃色の髪にブルーの瞳、顔面蒼白気味。白のYシャツの下にはインディコブルーのTシャツが見え、うちの制服紺青色のズボン。     彼の纏う青色が全て調和している……まるで夏の真っ青な空のような感じ。
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