給食が一人だけ白い〜逆食テロ犯は給食で牛乳を振りまき大食缶飯が爆誕する〜

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 N〇K放送で流行ったアニメ作品、何にでも牛乳を注ぐ女をご存知だろうか。  中毒性ある曲調に動くイラスト、そして曲名通りに、フェルメールの牛乳を注ぐ女っぽいやつがあらゆる食を牛乳に染め上げてしまう恐ろしいアニメだ。  私はYouTube動画で投稿されている、何にでも牛乳を注ぐ女パロの原神動画がお気に入りだ。  話は打って変わって。  小学校での給食程楽しい時間はあるだろうか(唐突)  毎日眠い授業、一人暇な休み時間、労働作業の清掃、どれを取っても給食に勝てる強者はいないはずだ。  当時の私は四時間目の授業を終え、給食に向けてせっせと運ぶものを運んでいた。  週交代で係が決まりるのだが、今週の私は一番楽な仕事のお玉セット係。二人がかりでコンテナ室から教室まで運ぶ大食缶と比べれば、お玉セットは非常に軽いし一人で運べるので気が楽だ。  小学五年生ともなると少なくなるものの、運搬トラブルは度々起こる。  廊下で大食缶をぶちまけてしまった人を見ると悲しくなるし、その人が教室にカレーのおすそ分けを恐る恐る頼むシチュもまた悲しいものだ。  要するに大食缶運搬係は貧乏くじすぎる……  大食缶文化はどうにかならないのだろうか。  そんな大食缶エピソードはさて置き、机を四つ付けたグループ班に給食が全て行き渡った頃。  クラスメイト全員が席に着席して、いつもの言葉を待ち侘びる。  早く言ってなニュアンスの視線をクラスメイトから送られる、日直当番の二人が口を揃えて言う。 「「手と手を合わせて」」  のセリフと共に、クラス全員でいただきますコール!  会話交じりの流れ作業の後は、待ちに待ったお楽しみ、給食タイムだ!  本日の献立はカレー。誰もが愛してやまない給食の献立に皆は満面の笑みだ。  否、私のグループ班で笑顔じゃない女が一  人。 「はあ、今日はカレーかよ……」  自分の机に置かれたカレーを睨みつける怖い人、目の前の席に座る妖怪牛乳かけ女だ。  名前を牛乳から取ってミルとしよう。  ミルは世にも珍しいカレーが嫌いな人間だ。本人曰く、普通に食えはするが、嫌なものは嫌だという。 「今日も魔法のアイテムを使いますか」 「ミル、またアレするの? 食欲失せるから止めて欲しいんだけど」  隣の女子がため息混じりにそう言うも、ミルはその手を止めない。  少し脱線するが、皆大好き大食缶エピソードに戻ろう。  給食は必ずしもクラスメイト全員が完食する訳ではない。  特に、牛乳が嫌いな人は少なからずクラスにはいるもので、牛乳がどうしても余ってしまうのだ。余った悲しき牛乳は、大食缶に投入されコンテナ室に戻される。  残ったカレーと投入された牛乳がマーブリング状に混ざり合う絵面は、かの有名なジャイアンシチューをも匹敵するおどろおどろしいのもに大変身!  逆食テロなこの大食缶牛乳カレーは、食欲ゼロギニュー特戦隊の一人に違いない。他のメンバーに、袋麺入りスープ、かぼちゃシチュー、ワカメスープが加入している。  え?  美味しい給食エピから食欲無くするエピをするなと?  だってしょうがないじゃないか、目の前の女が食卓の上で大食缶クッキングをしているのだから。  もう察しがついてるだろう、目の前にいる女は、よせられたカレーに牛乳を注いでいるのだ!  控えめに言って頭おかしいよ、色が食べ物のそれじゃないもん。  世紀末カレーを一口頬張り。 「びゃあうひいぃぃ」  と卵割りしそうな奇声を発するミル。これは美味いの上位互換だ。  実際は発してなかったと思うが、牛乳カレーを美味しそうに食べる光景は地獄絵図だったし仕方ない。  斜め横に座る男子はドン引きしながら言う。 「うえ……マジでやりやがったこいつ……」 「逆に私は、なんで皆普通にカレーを食べれるのかな~って思うんだけど、おかしい?」  おかしいの受け答えに、私含めグループの三人はこくこくと頷く。  しかし牛乳の進撃は終わらない。  ミルが食していたのは牛乳カレー、そう、カレーライスじゃなくてカレーなのだ。  つまり必然に、極自然に、女は慣れた手つきで牛乳を注ぐのだ。  カレーがかかってないただの白飯に!!!  時に、菅〇将暉は牛乳ライスが好物だったりする。これには意外にも共感の声が多く挙がった。  ここまで言っておいてなんだが、人の善し悪しに指図することは良くないことだ。嫌だなと思うこと自体は悪くない、口にせず心の中でしまって置くのが最善。  でもね、心の中で叫びたいこともあるんだよね。  牛乳ライスはいいけどさ、カレーがあるのに牛乳ライスで食べるのはおかしくないか!? と。 「ひぃ……」  とどこかの班から悲鳴が聞こえ、後ろの席から身を乗り上げ、私のすぐ横から覗き込む者も出始める。  元々白かったご飯をさらに白くする強者は、牛乳ライスをぺろり。 「はぁ~やっぱりご飯のお供には牛乳だわ」 「「「……」」」  もう私達は絶句していた。  この光景をほぼ毎日見ているはずなのに、どうして慣れないものなのか。思わず口を抑えてしまう。  私が初めて見た牛乳侵略はにんじんだった。  その日ミルは器用ににんじんだけ残して、嫌いなにんじんに牛乳をぶっかけ始めたのだ。にんじんに恨みがあるのか、にんじんが入っている食べ物は全てもれなく牛乳が注がれる。  実はカレーに牛乳が注がれる理由も、にんじんが入っているかららしい。  にんじんを残して大食缶にさよならバイバイすればいいものを、こだわりなのかプライドなのか、残さず食べることだけは正直凄いことだと思う。拍手喝采だ。  しかし、にんじんと全く関係ない、白飯にも冤罪をかけられるのは謎だ。取り憑かれたマヨラーのように、牛乳の魅力に取り憑かれたのだろう。ミルラーの爆誕だ。  ちなみに給食でにんじんを見なかった日はほぼ無い。ご愁傷さまだ。 「ふぃ~美味かったなあ、あ、そういえば知ってる? 暗〇教室の〇センセーっておっぱい食べるんだよ!」  唐突に漫画ネタをぶっ込んで来るミル。小学五年生ともなると、ジャンプ漫画を読んだり、深夜アニメを見始める人が何人か出始める。アニメ進撃の〇人がクラスで流行ったのもこの頃だった。 「へ~」  語彙力とエンタメに欠けまくった私は、興味の無いようにそう呟き返す。  この頃は暗〇教室なんて知らなかったし、おっぱいを食べるなんて嘘を見破れることも無かった。確かに〇センセーはおっぱい好き星人だけどさ。ピンク顔でヌルヌルするし。  まあ、誰から聞いた伝達ミス情報をそのまま喋っていたのだろう。 「本当なんだって~こう、ガブッとちぎるんだよ」  嘘なんて言ってないのに、証明を試みる嘘つき。牛乳カレーが入った口を開かないで欲しいものだ。ただでさえ食欲ダウンしているというのに。  牛乳カレーと牛乳ライス、にんじんが入っていない副菜は牛乳の刑を逃れ完食されていた。とても綺麗な食べっぷりに、先生からお褒めの言葉を貰っていたかもな。一部始終さえ見ていなければ! 「あ、これやるよ」  とミルが私にポイしたもの。  牛乳パックのストロー口から入れる、コーヒーの元の液、ミルメークコーヒーのスポイトだ。 「あ~いいなあ、俺にもくれよ」 「いらないからあげる」  斜め横の男子にバトンされるコーヒースポイト。私は既にコーヒー牛乳を飲み終えていたので、今更渡されても遅いのだ。  コーヒースポイトを貰った男子は。 「へへへ、いただきます」  と言いながらスポイトを直で飲み始めた!  あの甘ったるい原液を飲めるなんて……苦いコーヒーを飲むカッコ良さとは逆方向だが、これはこれで一周回ったカッコ良さがあるかもしれない。  男子の原液飲みっぷりを横で眺めていたミルは。 「うわぁ~引くわぁ~」  おまえが言うな!!!  私は心の中でそう叫んでいたはずだ。  クラスメイト全員もそう叫んでいただろう。  そうして給食タイムも終わりが近づいて来た時、私は興味本意でミルに聞いてみた。 「牛乳好きなんだから、おかわりしてもう一パック飲めばいいんじゃない?」  私の疑問にミルは衝撃的な一言を放つ。 「いや、私牛乳は好きじゃないよ、普通くらいかな。味変に便利でいいよね」  私はこの言葉にもう何も言えなかった。おかしいじゃん、わけがわからないよ。  内容が濃かった給食の時間は終わりを告げ、皆それぞれ片付けに入る。  トレーを片付ける時に、横に置いてある大食缶の中身をふと見てしまう。  さっきまで目の前にあったそれが、大食缶の中で渦巻いていた。やっぱり牛乳おかしいって。  ここで牛乳カレーエピソードが幕を閉じる訳なのだが、忘れてはいけない。にんじんはほぼ毎日献立に入っていることを。  ───明日の献立はうどん。  袋麺を暖か豚汁に入れて食べるこれまた美味しいメニューだ。  豚汁ににんじんが入っているな。  フッ……  明日のライブは豚汁うどんに牛乳注ぎかあ。……早く席替えしたい。
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