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第一章 PA連携
八月に入ったというのに、北東北では、まだ梅雨明け宣言はされていない。
梅雨が明けていないからといって涼しい日が続いていたというわけではない。太陽は、ぎらつく光線を間断なく地上に撒き散らしており、猛暑日と言われる日は、これまで二桁は記録されている。
しかし人々は、梅雨が明けてから本格的な夏が到来するものだと信じていたので、いまはもう夏なのだぞと言わんばかりのぎらぎらした熱線が地上に放射され続けている現実を見てはいたが認めなかった。見て見ぬふりをしていた。暑さに対する準備を怠っていた。
その結果、熱中症疑いの傷病者が爆発的に発生した。
今、出動指令を受けた矢留市消防本部中通消防署ポンプ第一小隊は、強烈な日差しと狭隘な道路に気をもみながら、緊急走行をしている。
「ちっ、もうちょっとで昼飯だったのによぉ」
「しかたねえべ。この仕事、時間でくくってたら始まらねえもの」
「毎度のことだども、いい加減にこの狭い道路、何とかならねえのかよ」
「ならねえべ。住民どご立ち退かせる理由がねえもの」
「それにしても暑い。何とかならねえのか」
「ならねえべよ。夏だもの」
隊長である仙北谷義仲は、運転しながらぼやく小松田孝徳をたしなめた。暑いから窓は全開、そのうえサイレンの吹鳴もあるから、ほとんど怒鳴りながらの会話である。
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