一夜目 一人ヶ原

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「どれ?」 hina「お姉ちゃん、昔から唐突によくわかんない話始める時あるじゃん? 意味もなければオチもない、『で?』って言いたくなるやつ。うちの人生思い返した中で、あの手の話を聞いてる時が1番眠くなるんだよね」 「それ、暗に話がつまらないって言ってる?」 hina「すぐ悪い方に取る! 人を安心させて癒す声質をしてるって意味かもしれないよ? お姉ちゃん……佐山菜月サンの声にはF/1揺らぎっていうの? そういう癒し効果があるんですよ、きっと」 「……適当なこというなぁ」 hina「あの手の話って、別に人を楽しませようとして『創ってる』わけじゃないんでしょ? ほら、前してくれた『開かずの踏切』の話とかも、なんか自然に浮かんでくるって言ってなかったっけ?」 「まあね。時々目の前に見たことないはずの風景が浮かぶことがあるの。それに何とか説明をつける作業って言うのが近いかな。だから、確かにお話を創るっていうのとは違うかもしれない。あ、あとさっきの踏切の話だけど、ただ単に『開かずの踏切』ってだけじゃないよ。あれは家の話。両端を線路に挟まれて、中洲みたいになったところに一軒だけ建った家が……」 hina「わかった、わかったから! とにかく、その手の話をある種のASMRとして聴けば快眠できるんじゃないかという目論見なんですよ。で、お姉ちゃんもシフトの都合上いつも夜勤とは限らないじゃん? だから、普段使いできるように録画をしとこうと思って」 「何か、すごい都合よく使われてる気がする……」
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