三夜目 どこにもない家

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 私は、今ここにあなたがいるからだと思っています。  妹と語り合うことで、夢か現実かもわからない頭の中の風景を元にいくつもの「お話」と思い出が生まれました。  それと同じように、この文章の中で妹はあなたと出会うことができる。そうやって出会った彼女のこと、できれば覚えていてくれると嬉しいです。  もちろん、ここに書かれているのは妹の「全て」ではありません。記憶の中の風景もまた、書いている途中で微妙にずれていくのを感じました。  だから、また語ろうと思います。指の隙間をすり抜けていく記憶を、全て受け止められるその日まで。  ここまで書いていて、薄っすらとした白い光が、窓から差し込んでいることに気づきました。  わずかこれだけの文を書くのに、ずいぶん長いことパソコンの前へ座っていたものです。  さすがに、目がぼやけてきました。頭も重いです。そろそろ筆を置こうと思います。(この文章を書いているのはパソコンですが)  それでは、いつかまたあなたが彼女の「お話」に触れるその日まで……おやすみなさい。
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