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ブルースにとってフリッツは主君であるのは勿論のこと、それ以上に幼い頃から遊び相手をして来たこともあり、まるで弟に対するような感情があるのも確かであった。
まだまだ子供だと思っていたフリッツが女に夢中になっているなど、ブルースにとっては正に寝耳に水の出来事であった。
人一倍女に疎い彼には、どう若い主君に接していいのか見当がつかない。
しかも相手がよりによってラフレシアとは。
ブルースとエメラルダは同じ年、同じ月に生を受けた。
僅かにブルースが七日早く生まれている。
そして父親同士が無二の親友という関係から、物心がつく前からまるで双子同然に育った。
なにをするのも、どこへ行くのもいつも一緒であった。
そんな関係からエメラルダの従姉妹であるラフレシアとも、時折遊んだものだ。
エメラルダの父ダリウスの妹ローゼスが嫁いだのが、若き日のユーディであり、二人の間に初めて生まれた娘がラフレシアである。
しかし二歳年上のラフレシアはその年齢差以上に、妙に大人びた子供だった。
いつも悪戯ばかりしようとするブルースを、まるで大人の女性のごとき口振りで窘めたものである。
いつもはブルース以上にお転婆なエメラルダも、彼女の前でだけは何故か普通の良家の子女のようにお淑やかに振る舞った。
そんなエメラルダの良い子振った態度が、ブルースは不満で仕方なかった。
しかしブルース自身も、その二歳年上の少女には、何故か逆らうことができなかった。
ラフレシアの大きな澄んだ空のような蒼い瞳でじっと見詰められると、まるで蛇に睨まれた蛙のように、なにも言えなくなってしまうのだ。
本人は気付いていないが、彼女こそがブルースが異性を意識した、初めての存在であったのかもしれない。
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