1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「それは良かった。おめでとう」
妻と離婚して三年になるが、その間一度も息子とは会っていない。
近況は、もっぱら、息子の妻である、達郎の娘から聞かされていた。
息子の義父であり、俺の恋人という複雑な関係の達郎と一緒に新幹線に乗りながら、俺は達郎の、ほのかに赤らんだ顔を見つめていた。
達郎は、一人娘との通話を終えて、すこしせわしない様子だった。
「電話、何だった?」
「俺たちの子どもに、赤ちゃんができたらしい」
「え……?」
「つまり、俺の娘と、お前の息子の間に、子どもができた。俺たちは、おじいちゃんになるってことだな」
いつも物静かな達郎の声が、妙に弾んでいる。
「そうか」
俺は、ビールを片手に頷いた。
「義明、うれしくないのか?」
「俺は、息子からは絶縁させられているからな。俺が喜ぶことを、息子は望んでいないんじゃないか、とな」
「そんなことは……」
達郎が、少しうつむく。
最初のコメントを投稿しよう!