花埋め

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 俺は、もともと、女性が好きだった。  だった、と過去形なのは、達郎と出会って、すべてが変わってしまったからだ。  妻の利発さに惹かれたし、妻は運命のひとだと思っていた。  けれど、次男が「結婚する」といって、相手家族と俺を引き合わせてから、すべてが変わってしまった。  俺は、次男の嬉しそうな様子や、嫁となる若い女性の爽やかな若さよりも、朗らかにわらう達郎の姿に、なにかの衝撃を受けてしまったのだ。  達郎は、俺より一つ年上だったから、当時でも五十代になろうとしていたおっさんだった。  でも、そんなのは関係なかった。 「どういうことだ……」  もちろん、俺だって混乱した。  いままで、男性を好きになったことはなかったからだ。  それに、相手は次男の結婚相手の父親で、互いに家庭がある。  それなのに、達郎の姿が瞼から離れないなんて。  家庭とか、父親とか、社会的地位とか。  そんなものが、全部吹き飛んでしまった。 「傾国の美女」なんて言葉があるが、女のために国を傾かせた男の気持ちが、わかるような気がした。
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