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そう告げる達郎の笑顔に、おもわず、涙腺がうるみそうになった。
「一緒になって、五年目だ。今年は、ちょっと遠出して桜を見に行かないか」
と達郎が言ったのは、冬のことだった。
男二人のわび住まいである。
住んでいた土地で噂が広まってしまったため、県をまたいで引っ越しをして、仕事場も変えた。
ようやく生活が落ち着いてきたころに、達郎がそう告げたのだ。
「いいな。どこに行きたい?」
俺も、一も二もなく承諾した。
「そうだな。河津桜なんて、いいかもしれない」
達郎がそういって、俺たちは今、新幹線に乗っているのだ。
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